辞書

国境炭素税とは?EUが2023年からの導入を目指して進めているその背景と今後の流れを解説

国境炭素税とはなにか?

メディアではよく国境炭素税と呼ばれていますが、正式名称は「炭素国境調整メカニズム」(CBAM)です。これは簡単にいうと炭素排出削減に積極的に取り組んでいる国での炭素価格とあまり積極的に取り組んでいない国の炭素価格を同等にする取り組みです。

例えば、炭素削減に熱心に取り組んでいるA国は炭素価格を1万円に設定していると仮定します。そして、熱心に取り組んでいないB国は炭素価格を1,000円に設定しているとします。この場合、ある企業がある製品を作った場合に、A国で作るよりB国で作った方が炭素排出コストの差額分安く作れるということです。つまり、B国で作った製品の方が9000円分安くなる可能性があるのです。

この状況を防ぐためにA国(炭素価格が高い国)ではB国(炭素価格が低い国)の製品を輸入する際に関税として、A国とB国の炭素価格の差分を課金します(9000円程度)。また、A国からB国に輸出する際には、A国とB国の炭素価格分の差分を還付する場合もあり得ます。

なぜ国境炭素税を導入するのか?

前述の通り炭素価格が国ごとに異なる場合には、製造コストが生産国の炭素価格に左右されることになります。つまり気候変動対策が緩く炭素価格が安い国で生産した方がコストを下げることができるため、その分安く売ったり利益率を高めることができ、企業にとっては競争力向上につながる可能性が大いにあるのです。

このことから以下2つの問題が発生することがわかります。

  • 「国境炭素税がないと起きる問題1」:炭素価格が高い国で生産している企業の競争力が低下する
  • 「国境炭素税がないと起きる問題2」:炭素価格が安い国に生産拠点が移り、その結果、世界全体での炭素排出量が削減できない

EUは脱炭素に向けた世界的な取り組みを牽引しています。具体的には、2030年までにGHG排出量を1990年比で最低55%削減することを目標としています。そのためカーボンプライシングとして炭素排出量取引制度(EU ETS)を導入しています。

EU ETSにおける炭素価格は1トンあたり、2020年12月の30ユーロから2021年12月には80ユーロまで上昇しています。これは1ユーロを140円で換算すると1年で4,200円から11,200円になっている計算です。この炭素価格の急騰からも、「国境炭素税がないと起きる問題」への対応が急務になってきたという背景があります。

EUでの今後の導入の流れ

EUは2022年6月22日、欧州議会は気候変動関連の包括法案を圧倒的多数で採択しました。国境炭素税(CBAM)はこの包括法案に含まれています。EUの立法プロセスとしては、この後に欧州議会と欧州理事会の交渉が待っています。

国境炭素税は対象品目を鉄鋼、セメント、肥料、アルミニウム、電力としていた。しかし、欧州議会がこれに化学品(水素、アンモニア、有機化学品)とポリマー(プラスチックおよびその製品)を追加した修正案を提出しました。また、排出量の計算範囲に関しても当初は直接排出(スコープ1)のみを対象にしていましたが、修正案で生産過程で消費される電力などの間接排出も含まれることになっています。

競技が順調に進むと、2023年1月から移行期間として対象セクターの輸入品の排出量報告が義務化され、2026年から支払いが義務化されることになっています。

参考