ファストファッションは終わり
辞書

ファストファッションはもう終わり?環境や労働問題とヨーロッパでの取り組みとは?

ファストファッションとは何か?

ファストファッションとは、最新の流行を取り入れた安価な商品を大量生産し、短いサイクルで生産から販売まで行うブランドやその業態のことです。安くて早いがシンボルの「ファストフード」のファッション版といった位置付けです。

ファストファッションが流行った背景には、一方には流行に敏感な消費者が存在していて、他方にはその消費者に流行を取り入れた商品を提供し続ける生産者の存在があります。

消費者は、目まぐるしく変化する流行に敏感で、それを取り入れるために買い物を続けます。そのため流行が変化するたびに新しい服を買い、古くなったものは捨てます。その結果、商品は流行から遅れないように早く提供する必要があり、また継続して消費行動ができるように安価である必要がありました。

生産者は、流行を取り入れた商品を素早く安価に提供する必要があります。そのため、労働力の安い場所で生産したり、品質を妥協したり、安価な素材を使うことでそれに対応しました。

また生産される商品の品質が、結果として、この構造を強化することにつながっています。なぜなら、購入した衣類は低品質であるがゆえに長期間の利用に耐えられず、そのため消費者は「流行を追う」以外の理由からも短期間で新しい商品を購入し続けることを余儀なくされてしまうためです。

ファッション業界の抱える問題

流行のファッションを低価格で手に入れることができるなど、一見すると消費者にとってファストファッションは喜ばしいことにも見えます。しかしいくつかの問題点も指摘されています。これらの問題は、大きく分けると環境面と労働環境などの社会面の問題があります。

ファストファッションの問題は、ファッション業界全体の問題と重なる部分が多いです。そのため、ここからはファッション業界全体の問題として記述していきます。

製造から廃棄に至るまでの環境負荷

ファッションが環境に与える負荷は大きく二つの段階で説明できます。一つ目は製造段階です。二つ目は、私たちが衣服を利用する段階です。

製造段階での環境負荷

製造段階の環境負荷としては、三つ挙げられます。一つ目は、大量の資源が消費されていることです。二つ目は、大量のエネルギーが消費されていて、炭素排出も多いことです。三つ目は、危険な化学物質による汚染です。

まず、一つ目の資源の大量消費についてです。繊維の生産には大量の水が必要です。国連の調査によると、毎年ファッション業界は930億立方メートルもの水を消費していると推計されています。これは500万人の1年当たりの水需要を満たすことができるほどの莫大な量です。

次に、二つ目のエネルギーの大量消費とそれに伴う炭素排出の多さです。2020年の欧州議会の報告では、世界の温室効果ガスの10%は衣服や靴の製造によるものとされています。これは、国際航空と海上輸送からだされる温室効果ガスを足し合わせた値よりも多いです。

炭素排出が多い理由の一つに、ファストファッションで多く使われている合成繊維の存在があります。2019年に出されたイギリス議会の報告では、Tシャツ一枚を作るのに排出される炭素量は、合成繊維であるポリエステルが綿の二倍以上とされています。合成繊維の炭素排出量が多い原因は、原料である化石燃料の採取や、化石燃料から合成繊維への転換に多くのエネルギーが必要なためです。

最後に、三つ目の危険な化学物質の利用に関してです。危険な化学物質は、農地で綿花の栽培に使う農薬として、また工場で染料などとしても使われています。こうした工場で使用する有害な化学物質の一部が河川に漏れ出て水質汚染を起こす事態も発生しています。

利用段階での環境負荷

利用段階での環境負荷として大きなものは、マイクロファイバーによる海洋汚染です。マイクロファイバーによる海洋汚染の大きな要因として、合成繊維で作られた衣服があげられています。

合成繊維で作られた衣服を洗濯すると、マイクロファイバーが抜け落ち、そのまま下水を通って海洋に放出されてしまいます。特に最初の5〜10回の洗濯時に、大量のマイクロファイバーが抜けおちるとされています。つまり、新しい服ほどマイクロファイバーの流出が多いのです。

そのため、新しい衣服を買い続けることを前提としたファストファッションは、マイクロファイバーによる海洋汚染への影響がとても大きいとされています。

労働などの社会問題

ファッションが抱えている労働などの社会問題は大きく三つに分類できます。一つ目は児童労働の問題です。二つ目は、労働環境の安全性です。三つ目は、労働条件です。そして、これらは主に先進国の消費者に安価な衣類を提供するために、発展途上国で発生している問題です。

一つ目の児童労働に関しては、国連の専門機関である国際労働機関(International Labor Organization)の2022年の報告によると、全世界で1.52億人が児童労働に従事しているとされています。

二つ目の労働環境の安全性に関しては、そもそも工場のある建物の安全基準が守られていなかったり、有害物質を扱っていても安全を確保するための器具などの装置がないといった点が指摘されています。

こうした悲惨な労働環境に関して注目を集めるきっかけになったのが、2013年4月にバングラディシュで起きた「ラナプラザの悲劇」と呼ばれる事故です。これは、複数の縫製工場が入った8階建ての「ラナプラザ」という商業ビルが崩れ、中にいた従業員1,127人が死亡するというファッション業界史上最悪の事故です。

三つ目の労働条件に関してです。労働者は低賃金で長時間労働を強いられています。また、労働契約も結ばれていないため、怪我をしたときの手当てなども存在しません。

ファストファッションの問題とヨーロッパの取り組みとは

上記のように、ファッション業界は環境面と社会面での問題を抱えています。

その中でも特に、資源とエネルギーの大量消費や、それに伴う二酸化炭素の大量排出といった環境の問題に取り組む動きがヨーロッパで起きています。その動きとは、EUが主体となり進めている繊維業界の「サーキュラーエコノミーへの移行」です。実際、2022年3月30日に欧州委員会はこの取り組みの大枠を立案しました(「EU Strategy for Sustainable and Circular Textiles(筆者訳:サステナブルで循環型の繊維業界実現に向けたEU戦略)」)。

この戦略は以下のような目標を掲げています。(日本語の後に英語の原文が続きます。)
「2030年までにEUで販売される繊維商品は、長期間利用できる丈夫さを持ち、リサイクル可能で、再利用された繊維を使って作られていて、有害物質を含まず、社会的な権利と環境に配慮して製造されていることとする」

By 2030 textile products placed on the EU market are long-lived and recyclable, to a great extent made of recycled fibres, free of hazardous substances and produced in respect of social rights and the environment.

また、この中でファストファッションは時代遅れで、消費者により求められているのは丈夫で長期間の利用に耐える商品だとも宣言しています。

Consumers benefit longer from high quality affordable textiles, fast fashion is out of fashion,….

上記の目標の実現に向けて、資源とエネルギーの無駄遣いを止める多くの取り組みが構想されています。 一つ目は、製品の計画段階での取り組みです。この取り組みには大まかに以下のようなものがあります。

  1. 資源のリサイクルを促進するため、製品に含まれるリサイクル繊維の割合を定める
  2. リサイクルしやすいように、有害な化学物質の使用を制限する。また、様々な繊維が混ざるとリサイクルしづらいので混ぜ合わせることに関する取り決めを作る
  3. 製品の利用可能期間を長くするために、丈夫な作りにするよう一定の品質を求める
二つ目は、製品の廃棄段階での取り組みです。この取り組みには大まかに以下のようなものがあります。
  1. 未売品や返却された商品の切り刻んだりして処分することを禁止する。
  2. 拡大生産者責任の概念を使って、製品の廃棄段階でも生産者に責任を負ってもらう。たとえば廃棄品の回収や、生産物に対してあらかじめリサイクル料金を課税するなどといった手法が考えられます。
  3. 廃棄品の海外輸出を禁止する。従来は多くの廃棄物が輸出されていました。しかし、これは資源の海外流出でもあります。

参考