サステナビリティ経営 企業

企業のESG経営分析(炭素排出量)ーKao 花王株式会社2020年

花王株式会社のサステナビリティ経営分析(炭素排出量編)

花王株式会社のサステナビリティ経営(炭素排出量)について分析します。同社の該当分野での目標、施策、実績値を概観し、目標としておいている数字が達成できそうなのかを検証します。元データとなるのは同社が2020年に発行しているサステナビリティレポートです。

脱炭素の目標

花王株式会社では、脱炭素に関連する目標を以下の5つ置いています。
1. 2025年を目処に、購入電力を100%再生可能由来にする
2. 2030年を目処に、使用電力を100%再生可能由来にする
3. 2030年を目処に、花王グループ製品ライフサイクル全体による温室効果ガス排出絶対量を22%削減する。(2017年比)
4. 2030年を目処に、花王グループ全拠点からの温室効果ガス排出絶対量を55%削減する。(2017年比)
5. 毎年エネルギー使用量(売上高原単位)を1%削減する。(対前年比)

脱炭素に向けた活動

原材料購入、開発、生産、輸送、使用、廃棄の各領域で取り組みを行っています。その中でも、原材料購入、開発、生産、輸送段階について特に力を入れているように見受けられたので紹介します。

原材料購入における取り組み

主な取り組みとしては、①サプライヤーの脱炭素活動を促す、②原材料の低炭素化、③製品ライフサイクルCO2(LC-CO2)算定における原材料負荷の精緻化があります。

まず、サプライヤーの脱炭素活動を促す取り組みに関しては、気候変動、森林、水の各CDPサプライチェーンプログラムに参加して、原材料調達における環境負荷を低減する試みをおこなっています。具体的には、各領域でサプライヤーの活動状況を評価しその結果をサプライヤーにフィードバックする取り組みをおこなっています。気候変動と森林に関しては気候変動緩和の観点から、水に関しては気候変動適応の観点から取り組みをおこなっています。例えば気候変動に関しては、CO2削減活動に前向きに取り組んでもらうために各サプライヤーのCO2削減活動状況の評価・フィードバックを実施しています。また森林に関しても、パーム油や紙・パルプを提供するサプライヤーに対して、森林活動状況を評価・フィードバックを実施しています。これは調達時の森林破壊を防止するなど、責任ある持続可能な調達を開始してもらうことを期待しています。さらに水に関しては、河川や下水道の氾濫に備えた体制の整備を促しています。

また、原材料の低炭素化の取り組みに関しては、リサイクル樹脂、植物由来樹脂、薄い段ボールなどのより低炭素な原材料の利用を進めています。他にも原材料の納入量・頻度を最適化することで原材料輸送時のCO2削減にも取り組んでいます。

最後に、製品ライフサイクルCO2算定における原材料付加の精緻化に関してです。特にCO2負荷の大きな原材料を納入しているサプライヤーに対して、原材料の調達・加工時に発生するCO2排出量を回答してもらっています。この取り組みによって花王のCO2排出量算出がより精緻に行われるだけではなく、サプライヤーのCO2排出量削減取り組みの評価ができるため、花王の製品ライフサイクルのCO2削減に貢献しています。

開発における取り組み

新製品や既存製品の改善の際には「環境適合設計要領」に定めた環境基準を満たしていることを確認しています。同基準では全ライフサイクルCO2排出量も評価対象に含まれています。特に水を使う製品に関しては、浄水場、下水処理場などでエネルギーが使用されCO2が排出されることから節水効果に重きをおいて開発を進めています。

また、技術開発においては効率の良い太陽光電池の作成技術を東京大学などと進めています。その他にもCO2を原料として利用する技術に対しても投資しています。

生産(工場・事務所・ロジスティクスセンター)における取り組み

省エネ化による使用エネルギー量の削減と、使用しているエネルギーをクリーンにする取り組みを主に進めています。

まず省エネ化に関しては、方針として大きく①高効率な機器の導入、②利用されていないエネルギーを排除を柱として取り組んでいます。高効率な機器の導入に関しては、冷凍機・空調機・コンプレッサーなどをBPT(Best Practice Technologies)機器に置き換えたり、照明のLED化を進めています。利用されていないエネルギーの排除に関してはするために、無駄なエネルギーを最低限に抑えたり、未利用のエネルギーを別の用途に利用する取り組みをしています。一例として蒸気利用の効率化のために、スチームトラップのメンテナンス強化と上記の回収量口上を継続的に実施しています。その他にも事務所内の未使用電気の削減などもおこなっています。

またエネルギーのクリーン化に関しては①天然ガスの利用、②再生可能エネルギーの利用の2つの観点で取り組んでいます。天然ガスがクリーンであるという認識に基づき、インフラが整っているすべての工場で天然ガスを使用していて、石炭を利用している工場は一つもない状態です。再生可能エネルギーに関しては、各施設で自家消費用の太陽光発電設備の導入を進めています。これらの設備からの2020年の総発電量は4,978MWhでした。また、再生可能エネルギーの購入も進めていて一部の拠点ではすべての購入電力を再生可能エネルギーにしています。これらの取り組みの結果、再生可能エネルギー利用による脱炭素効果は131千トンでした。

輸送における取り組み

国内においては、①一度の輸送における輸送量の拡大、②輸送距離の短縮化、③よりクリーンな輸送手段の利用、④実車率の向上に取り組んでいます。

特に、よりクリーンな輸送手段の利用に関しては、トラックから鉄道・船などのCO2排出量が少ない手段を転換しています。(モーダルシフト)

また、実車率の向上に関しては輸送先からの帰り道でも荷物を積む(実車率の向上)ことで、実質的な輸送時のエネルギー消費を抑えることができます。例えば、ライオン株式会社と共同してスマート物流に取り込んでいます。その結果、従来の輸送方法に比べると両社合計でCO2排出量を45%、輸送費用を23%削減を見込んでいます。"

脱炭素の実績検証

炭素排出量の概要

花王株式会社の炭素排出量推移

CO2の排出割合としては、スコープ3からの排出が大きな比率を占めています。また、2018年以降スコープ1、2からの排出量は着実に減少傾向にあります。中でも、スコープ2の排出量が大幅に減少傾向にあります。

目標別の実績検証

同社が目標としておいている5つの項目についてそれぞれ検証していきます。

1. 2025年に、購入電力を100%再生可能エネルギー由来にする

花王株式会社の購入電力量の推移

2020年の実績はグループ全体では38%、日本花王グループに限ると53%です。2019年からの変化を見ると、それぞれ10ポイント(28%から)、15ポイント(38%から)の上昇です。日本花王グループに限って言えば、2024年には目標を達成できる見込みがあり、とても好調な推移です。しかし、グループ全体で見ると2025年には88%にとどまる可能性があります。そのため、より一層の改善が必要そうです。

2. 2030年に、使用電力を100%再生可能エネルギー由来にする

2020年の実績はグループ全体では28%です。この数字は2020年から公表されているため、年度比較ができないため今後の展開に注目したいです。

3. 2030年に、温室効果ガス排出絶対量(花王グループ製品ライフサイクル全体)を2017年比で22%削減する

製品ライフサイクル全体のCO2排出量の推移(花王グループ)

この目標を達成するためには毎年201.5千トンの削減量が必要で、計算上は2020年の段階で5.08%の削減が達成されている想定でした。

しかし、ここ3年の平均削減量を見てみると165.3千トンに留まっています。また2020年の削減率の実績は、2017年比で3.82%の削減と、想定より1.2ポイント近く低い水準に留まっていました。

このままの推移でいくと2030年の最終着地としては2017年対比18.04%の削減率に留まる想定です。

同社は使用段階のCO2を削減する節水型の製品等広く展開していますが、今後の対策として全体への寄与がより大きな使用段階でのお湯・電力使用量の少ない製品の拡大、原材料使用量の削減、再生可能原料への転換を進めていく想定です。

4. 2030年に、温室効果ガス排出絶対量(花王グループ全拠点)を2017年比で55%削減する

全拠点のCO2排出量の推移(花王グループ)

この目標を達成するためには毎年44.9千トンの削減量が必要で、計算上は2020年の段階で12.69%の削減が達成されている想定でした。

実際に、ここ3年の平均削減量を見てみると56.4千トンと想定を上回っています。また2020年の削減率の実績は、2017年比で15.25%の削減と、想定より2.5ポイント近く高い水準を達成していました。

このままの推移でいくと目標である2017年対比55%の削減率は、想定より2年前倒して2028年に達成される想定です。

5. 毎年エネルギー使用量(売上高原単位)を、対前年比で1%削減する

2020年の実績は前年の値より悪い27%の削減にとどまりました。これは、新型コロナウイルス蔓延により売上が減少したこと、そしてCO2排出原単位の高い製品(ハンドソープ、衣料用洗剤)の売上が増加したことが要因と考察されています。

まとめ

同社の掲げている目標5つに対して検証を行いましたが、2/5は目標に到達できそう、1/5 は到達がこのままでは難しそう、2/5は判定対象外の結果となりました。
・【達成できそう】2025年に、購入電力を100%再生可能エネルギー由来にする(花王グループ日本)
・【達成難しそう】2025年に、購入電力を100%再生可能エネルギー由来にする(花王グループ)
・【判定対象外】2030年に、使用電力を100%再生可能エネルギー由来にする
 → 情報量が不足しているため
・【達成難しそう】2030年に、温室効果ガス排出絶対量(花王グループ製品ライフサイクル全体)を2017年比で22%削減する
・【達成できそう】2030年に、温室効果ガス排出絶対量(花王グループ全拠点)を2017年比で55%削減する
・【判定対象外】毎年エネルギー使用量(売上高原単位)を、対前年比で1%削減する
 → 毎年の判定が必要なため、毎年判定するのが適切と考えたため(2020年は目標を達成できていない)


あとがき

検証の方法として、公表されている目標値と基準値をもとに毎年一定の進捗が出ると仮定しています。そのため実体に即した検証結果になっていない部分があるかと思いますがご了承ください。

参考リンク