サステナビリティ経営 企業

企業のサステナビリティ経営分析(炭素排出量)ー全日本空輸株式会社2020年

全日本空輸株式会社のサステナビリティ経営分析(炭素排出量編)

炭素排出量の概要

全日本空輸株式会社のスコープ別CO2排出量推移

排出量の割合を見てみると、スコープ1の排出量が大部分を占めています(約80%)。
また排出量の推移を見てみると2018→2019年ではスコープ1, 3は増加していますが、スコープ2は減少しています。それぞれ変化幅は、スコープ1が+8%、スコープ2が-5%、スコープ3が+190%です。スコープ3は算出範囲が増えたため急増しています。2019→2020年では、全体的に減少傾向ですが中でもスコープ1, 3が60%それぞれ60%近い大幅な減少をしています。スコープ2は15%程度の減少に留まっています。

全日本空輸株式会社の2030年に向けた脱炭素の目標

全日本空輸株式会社では、脱炭素に関連する目標を以下の2つ定めています。
1. 航空機の運航におけるCO2排出量を2019年度(1233万トン)以下に削減する
2. 航空機の運航以外で発生するCO2排出量を2019年度比で33%削減する

各目標による想定される脱炭素効果を算出する

2019年度の同社のスコープ1*の排出量は約1,237万トンでした。しかし、それ以降の年度では2019年度を上回る排出がされていないため削減幅は計算できませんでした。また、公開されている2016年度以降のデータを含めても2019年度の排出量が最大であったため過去に遡っても削減幅は計算できませんでした。
※「航空機の運行におけるCO2排出量」とスコープ1の排出量がほぼ同一であるため、他の企業との比較をしやすくする便宜上「航空機の運行におけるCO2排出量」をスコープ1と読み替えています。

また、目標2に関しては2019年度の排出量は10.5万トンでした。そのため、33%が削減されると3.5万トンが削減される計算です。これは、日本人の平均的な年間CO2排出量が8.7トン(※)なので日本人約0.4万人分の排出量を削減することに相当します。
※世界銀行のデータより

目標に向けた活動

1. 航空機の運航におけるCO2排出量を2019年度(1233万トン)以下に削減する

目標達成のために、4つの取り組みの柱を設定しています。①SAF(Sustainable Aviation Fuel)の活用、②航空機の技術革新、③オペレーションの改善、④排出権取引制度の活用

特に①に関しては、従来の化石燃料とは異なり、動植物性由来で収集〜生産〜燃焼過程でのCO2排出量が少ない燃料です。SAFは、その供給量と世界的な需要量に大きなギャップがあり安定供給が課題として挙げられます。ここに取り組むため同社ではサプライチェーンの構築に積極的に取り組んでいます。

2. 航空機の運航以外で発生するCO2排出量を2019年度比で33%削減する

グループ全体で省エネ化と再生可能エネルギーの利用を進めています。省エネ化に関しては、各事業所での対応だけではなく空港車両としてEV、ハイブリッド車、FCVの導入や、自社施設・設備の省エネ機器への置き換えを進めています。

目標別の実績検証

必要な情報が十分ではなかったため、分析ができない状態です。基準となるのが2019年度で、その後の実績として公表されているデータが2020年度のみです。しかし、2020年度のデータは新型コロナウイルス感染症の影響で、大幅な下落幅となっていて信頼できる実績値ではないと考えたためです。

まとめ

目標設定に関しては、スコープ1は公表されている中で過去最高値を基準に、それ以下に削減するとしています。そのためあまり野心的とは言えない可能性があります。しかし2050年に向けては実質ゼロを目指している点、またCDP(外部評価機関)からは環境への取り組みで業界平均を上回る評価を得ていることから、業界特有の事情が絡んでいる可能性があるため評価は保留です。目標2に関しても33%削減と、他業種と比較すると一般的には50%削減を目標にしているためあまり野心的とは言えなそうです。

取り組みの成果については、2020年度は新型コロナウイルスの影響でイレギュラーであったため、現状では判定不能です。今年以降の実績に期待したいところです。

・目標の明確さ: o
・目標の野心度合い: △
・アクションプランの明確さ: △
・実績の明確さ: △

参考リンク

・世界銀行:日本人一人当たりのCO2排出量
https://datacommons.org/place/country/JPN?utm_medium=explore&mprop=amount&popt=Emissions&cpv=emittedThing%2CCarbonDioxide&hl=ja
・全日本空輸株式会社「環境目標と情報開示」
https://www.ana.co.jp/group/csr/environment/goal/
・ANAグループ環境目標
https://www.ana.co.jp/group/csr/environment/pdf/ana_fly_eco_2022.pdf
・全日本空輸株式会社「航空機の運航における取り組み」
https://www.ana.co.jp/group/csr/environment/operating/
・全日本空輸株式会社「航空機の運航以外における取り組み」
https://www.ana.co.jp/group/csr/environment/ground/
・ANAグループ環境データ
https://www.ana.co.jp/group/csr/data/pdf/environment_e_220323.pdf