サステナビリティ経営 企業

企業のサステナビリティ経営分析(炭素排出量)ー大和ハウス工業株式会社2020年

大和ハウス工業株式会社のサステナビリティ経営分析(炭素排出量編)

炭素排出量の概要

大和ハウス工業株式会社のスコープ別CO2排出量推移

排出量の割合を見てみると、スコープ3の排出量が大部分を占めています(約99%)。スコープ3の中でも、製品の使用に関わる排出量が全体の60%程度を構成しています。

また排出量の推移を見てみるとスコープ1, 2では2019→2020年で15%程度の減少傾向です。スコープ3は2018→2019年で10%程度の削減を達成し、2019→2020年は2%削減のと微減でした。

大和ハウス工業株式会社の2030年に向けた脱炭素の目標

大和ハウス工業株式会社では、脱炭素に関連する目標を主に以下の4つ定めています。
1. 2030年までに新築建築物における居住・使用段階のCO2排出量を2015年度比63%削減
2. 2030年までに全施設・全事業プロセスにおけるCO2排出量を2015年度比70%削減
3. 2030年に電力使用量の70%以上を再生可能エネルギーで賄う
4. 2025年までに90%以上のサプライヤーとパリ協定に沿った削減目標を設定し、2030年にそれを達成する

各目標による想定される脱炭素効果を算出する

目標1に関しては、2015年度のグループでの排出量は752万トンでした。そのため63%削減すると473.8万トンのCO2が削減されます。これは、日本人の平均的な年間CO2排出量が8.7トン(※)なので約54.5万人分の削減に相当します。
※世界銀行のデータより

目標2に関しては、2015年度のグループでの排出量は55.4万トンでした。そのため70%削減すると38.8万トンのCO2が削減されます。これは、日本人の平均的な年間CO2排出量が8.7トン(※)なので約4.5万人分の削減に相当します。

上記より、目標1+2の合計で日本人59万人分の排出量を削減することが期待できそうです。

目標に向けた活動

1. 2030年までに新築建築物における居住・使用段階のCO2排出量を2015年度比63%削減

同社は2030年までに原則として、全ての新築住宅と建築物は(※)ZEB / ZEH化し、太陽光発電設備を全棟に搭載することでカーボンニュートラルを目指しています。
※ZEB / ZEHとは、建物で消費するエネルギー(照明・冷暖房設備など)がゼロである建物のことを指します。省エネによる消費エネルギーの削減と、再エネ発電による必要エネルギーの自給が鍵になっています。

2. 2030年までに全施設・全事業プロセスにおけるCO2排出量を2015年度比70%削減

既存施設では省エネを推進し、新規施設ではZEB化することでエネルギー効率を高める想定です。また再生可能エネルギーの利用を拡大し、電力使用による排出を同時に削減することを目指しています。

目標別の実績検証

1. 2030年までに新築建築物における居住・使用段階のCO2排出量を2015年度比63%削減

大和ハウス工業株式会社のCO2削減量実績と目標(新築建築物の居住・使用段階のCO2排出量)

目標は「 2030年までに新築建築物における居住・使用段階のCO2排出量を2015年度比63%削減」です。この目標を達成するためには、毎年31.6万トンの削減量が必要で、計算上は2020年の段階で21%の削減が達成されている想定でした。

しかし、2015-2020年の期間は平均で11.9万トン「増加」しています。また2020年の削減率実績は、2015年比で7.8%の「増加」していて、想定を大幅に下回っています。
目標達成のために設定されていた「ZEB / ZEHの販売率」は同年度の目標値を達成しています。しかし販売した建築物の延べ床面積全体に占める「ZEB / ZEH」の建築物の延床面積の比率が想定より低かったと想定されます。そのため、今後は延べ床面積が広い建築物に対してもZEB化を推進できるように取り組む方針です。

このままの推移でいくと2030年まで緩やかに増加傾向が続いてしまうため、今後の施策に注目したいです。

2. 2030年までに全施設・全事業プロセスにおけるCO2排出量を2015年度比70%削減

大和ハウス工業株式会社のCO2削減量実績と目標(全施設・全事業プロセスにおけるCO2排出量)

2020年度は2015年度対比で23.7%の削減を達成しました。
目標は「2030年までに全施設・全事業プロセスにおけるCO2排出量を2015年度比70%削減」です。この目標を達成するためには、毎年16.6万トンの削減量が必要で、計算上は2020年の段階で23.3%の削減が達成されている想定でした。

実際のところ、2020年の削減率実績は、2015年比で23.7%と想定をわずかに上回っています。

ただし、計算上はこのままの推移だと目標達成ギリギリ難しいラインです。しかし2016年度を除く全ての年度で減少傾向であり、特に直近の年度は前年比で削減幅が大きかったことから取り組みが本格化してきているとも見れます。そのため、今後の動向に注目したいです。

3. 2030年に電力使用量の70%以上を再生可能エネルギーで賄う

大和ハウスグループの使用電力における再エネ利用実績と目標

2020年度は使用電力の再生可能エネルギー比率8.5%を達成しました。しかし、2019年度までは0.5%未満で推移していて、2020年度に急激に数字を伸ばしています。

そのため将来の数字予想は難しいですが、2020年度は同年度の目標値を1.5ポイントも上回っています。そのため同年度から本格的に取り組みは始めたと捉えると、今後の動向に期待が持てそうです。

まとめ

目標設定に関しては、当初はSBT基準の「2℃」を目標としていましたが、「well-below2℃目標」(2℃より十分低い目標)へアップグレードを行うなど野心的な印象を受けます。

取り組みの成果については、同社の1番の排出割合を占めている「製品の使用に関わるCO2の排出量」削減の進捗が芳しくないですが、その達成のために設定していた目標はクリアされていることから、方向転換を行うことで今後しっかりと改善されるのではないかと予想しています。

・目標の明確さ: o
・目標の野心度合い: o
・アクションプランの明確さ: o
・実績の明確さ: o
・実績の進み具合: x

参考リンク

・世界銀行:日本人一人当たりのCO2排出量
https://datacommons.org/place/country/JPN?utm_medium=explore&mprop=amount&popt=Emissions&cpv=emittedThing%2CCarbonDioxide&hl=ja
・大和ハウス工業株式会社 環境長期ビジョン
https://www.daiwahouse.co.jp/sustainable/eco/vision/
・大和ハウス工業株式会社 サステナビリティレポート2021
https://www.daiwahouse.co.jp/sustainable/csr/pdfs/2021/env_Data.pdf
・大和ハウス工業株式会社 サステナビリティレポート2020
https://www.daiwahouse.co.jp/sustainable/csr/pdfs/2020/Sustainability_All.pdf
・大和ハウス工業株式会社 環境行動計画(エンドレスグリーンプログラム2021)の実績と自己評価
https://www.daiwahouse.co.jp/sustainable/eco/egp/pdf/EGP2021.pdf