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2022年COP27はエジプトのシャルムエルシェイクで開催!緩和・適応、ロス&ダメージをわかりやすく

この記事では以下のEU議会の記事を元に書いています。英語から訳していますので、一部分かりづらい表現や誤った点があれば、Twitterアカウントからご指摘いただけると嬉しいです。
記事の元ネタ:https://www.europarl.europa.eu/RegData/etudes/STUD/2022/733989/IPOL_STU(2022)733989_EN.pdf
筆者のTwitter:https://twitter.com/takutotacos

COP27の概要

COPとは気候変動枠組条約の締約国が集まり、その実施状況やより実施を加速させるためにさまざまなことが話し合われ、決定される会議です。2022年は第27回目のCOPがエジプトのシャルムエルシェイクで開催されます。

COPの歴史などについては以下の記事で解説しています。

2021年に開催されたCOP26については以下の記事で解説しています。

気候変動緩和

気候変動緩和に関してはパリ協定4条で定められています。NDC(国が決定する貢献)という温室効果ガスの排出削減目標と、それに対応する政策などを5年ごとに提出することが求められています。

過去の議論の経緯

2018年12月にポーランドのカトヴィツェで開催されたCOP24ではNDCに記載するべき内容が決まりました。そして気候変動対応の野心度を上げる必要性から、2020年度までに締約国に対してNDCの新規提出、もしくは更新を求めました。

翌年2019年12月にスペインのマドリードで開催されたCOP25では、各国が提出したNDCによる削減の総量と、世界の平均気温を1.5℃に抑えるために必要な削減総量の乖離を埋めるために、今世紀半ばに向けた低炭素戦略の提出を求めました。

コロナ禍を挟んだ2021年11月にイギリスのグラスゴーで開催されたCOP26では、気候変動緩和に特に焦点が当てられました。これは、本来であれば2020年が野心的に更新されたNDCが提出される年だったという点と、IPCCの第6次評価報告書が報告されたタイミングだったという点が影響しています。なぜなら、今回のIPCCの報告書では気候変動が人為的に引き起こされている可能性に関して疑いの余地がないとしていて、加えてこの10年でCO2の排出を大幅に引き下げなければ世界の平均気温上昇を1.5~2℃に抑えることができないと報告していたためです。

この結果、COP26では以下の点が合意されました。

さらに各国に対して2022年内に、「世界の平均気温上昇を1.5℃に抑える」という目標に対して整合性のある2030年の炭素削減目標の再提出を求めました。

注目される議題

上述の通り、過去のCOPでは今世紀半ばのネットゼロを目指して、2030年までのこの10年間の取り組みが鍵であることが確認されました。またCOP26の時点では、その取り組みに対して各国の目標水準が十分でないことも指摘されています。それでは、2022年に開催されるCOP27では何が注目されているのでしょうか。

一つ目は、気候変動緩和に向けた各国の目標と取り組みの水準をより向上させられるのかという点です。

二つ目は、大気中のCO2の回収・吸収などのネガティブエミッション技術の役割についてです。IPCC第6次評価報告書でも気温上昇を1.5度に抑えるためには排出削減だけではなく、大気中のCO2を何らかの形で吸収する必要があると指摘されています。そのため、これらを実現する技術(CCS、CCUS、ジオエンジニアリング、カーボンシンクなど)の役割についても議論される想定です。

三つ目は、閣僚級ラウンドテーブルでの話し合いの結果についてです。この議論の結果、「気温上昇を1.5度に抑える」という目標と整合性のないNDCに関してや、COP26で宣言されたいくつものイニシアティブの実現に向けた調整(必要に応じて)に関してどんな成果が得られるかが重要です。

気候変動適応について

気候変動適応はパリ協定7条に記載があります。その中では、気候変動への対応力強化のために世界全体の目標を定めることや、必要に応じて各国が気候変動適応に関する時刻の優先事項や計画、実施内容などの情報を提出・更新をすることも記されています。また、気候変動適応に関しては国際的な協力が重要である点も強調されています。

過去の議論の経緯

COP24では、大きく2つのことが合意されました。一つ目は、先述の通り各国が必要に応じて気候変動適応についての情報を提出・更新することに関してです。二つ目は、適応基金に関してです。この基金は京都議定書に基づき、開発途上国の気候変動適応プロジェクトを支援する目的で2001年に設立されていて、ました。しかし、2020年で京都議定書の第二約束期間が終了することになっていたため、この基金がパリ協定でも継続して機能するようにという合意がとられたのです。

COP26では、2つの特筆すべき出来事がありました。一つ目は、先進国に対して2025年までに気候変動適応向けの資金援助額を少なくとも2019年の2倍にすることが求められたことです。入手可能な最新のデータである2019年の気候変動関連の資金援助額はおよそ800億ドルでしたが、その内200億ドル程度が適応向けの資金援助でした。気候変動適応向けの資金援助額は2018年から見ると、わずか20%の上昇にとどまっています。

二つ目は、パリ協定6条の排出削減量の市場メカニズムが認められたことに関係することです。排出削減量の取引方法の一つに、国連が管理をする方式があり、この取引で発生する事務費用の5%を適応基金に充当することが決まったのです。似たような仕組みは京都議定書下でも存在していましたが、当時定められていた2%の割り当てから見ると大幅な増額です。

国連管理ではない、二国間の排出削減量の取引制度に関しては以下の記事で説明しています。

注目される議題

上述の通り、気候変動適応に関しては、途上国に対して引き続き資金援助を行なっていくこと(適応基金の継続)、さらにその額を増やそうとする動きがあることを確認しました。

COP27では気候変動関連の世界の目標に関して、具体的な目標値とその進捗をどう測るのかについて議論されることが期待されています。この重要なアジェンダに取り組むためにCOP26では、「GlaSS(Glasgow–Sharm el-Sheikh work programme)」が設置されていました。そして、11月5日に今年4回目となるGlaSSの会合が開かれ、適応の優先順位について話し合われる予定です。(5 November 2022 – Fourth workshop on "Communicating and reporting on adaptation priorities")

ロス&ダメージ(損失と損害)

ロス&ダメージとは、人為的に引き起こされた気候変動によって引き起こされた損失や損害のことです。この概念は特に、後発開発途上国(Least Developed Countries)や小島嶼開発途上国(Small Island Developing States)と言われる、いわゆる気候変動の影響を受けやすい国や地域で長年懸念として意識されていました。

過去の議論の経緯

2013年のCOP19で、ワルシャワ国際メカニズムという気候変動の悪影響に関して対処するための国際組織が設立されました。

さらに、COP26では開発途上国がロス&ダメージに対する基金を設立することを求める声が上がりました。しかし、この要求は先進国にとっては受け入れ難いものでした。なぜなら、気候変動の悪影響に対して補償を規定することは、すなわち気候変動の影響に対する法的責任を受け入れたと解釈される可能性があるためでした。そのため、基金設立の代替として、ロス&ダメージに対応する活動への支援基金の設立を協議する「グラスゴーダイアログ(Glasgow Dialogue)」という取り決めを行いました。

注目される議題

グラスゴーダイアログの進展が注目すべき点として挙げられます。

開発途上国側からはロス&ダメージの基金の設立が強く求められています。実際、COP26のクロージングステートメントでは、G77と呼ばれる開発途上国グループと中国がCOP27でロス&ダメージ基金の設立が行われることを期待する旨の表明が行われています。

しかし、先進国としてはこれは簡単には受け入れられない背景があるのは前述の通りです。そのためロス&ダメージ対応のための資金供給の方法を探りつつ、それと同時に先進国は気候変動の法的責任を受け入れることを避けられるかという点が重要な議論のポイントとなりそうです。

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