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【たった3分】産業用の太陽光発電を導入する際に知っておきたいこと

Image by Grégory ROOSE from Pixabay

「産業用の太陽光発電って他とは何が違うんだろう」と疑問に思ったことがある方がいらっしゃるのではないでしょうか。

太陽光発電の導入を検討し始めると、住宅用や産業用という言葉を聞きます。この記事では以下の点について解説していきます。
①産業用とはなんなのか
②産業用のメリットとデメリットは何か
③産業用の導入に必要な費用の目安はどれくらいか
④産業用の導入に必要な工程は何か

産業用太陽光発電の定義とは

産業用の太陽光発電とは、10kW以上の出力を持つ設備のことを指します。反対に、10kW未満の設備のことを住宅用といいます。

両者の主な違いとしては、固定価格買取制度(FIT)による買取価格とその期間です。住宅用の方が売電価格が高く、期間は短いです。以下の表は、住宅用と産業用の太陽光発電の売電価格とその期間です。

ただし、売電価格は以下のグラフの通り年々下落傾向にあります。さらに近年の電気代高騰の影響もあり、現在の主流は全量売電ではなく、自家消費を中心とした使い方になってきています。

産業用太陽光発電の設置形態は主に4つ

産業用太陽光発電の設置場所によって、大きく4つに分類されます。

①自社の建物の屋上などに設置
②地上に設置
③水上などに設置
④農地の上に設置


(引用:太陽光発電協会「産業用太陽光発電システムとは」 https://www.jpea.gr.jp/industry/about/

産業用太陽光発電を導入するメリット

産業用の太陽光発電の導入には、主に以下のようなメリットがあります。
①電気代の削減を期待できる
②災害に備えた事業環境を構築できる
③自社の強みとして売り出せる可能性がある

それぞれ詳しくみていきます。

電気代の節約を期待できる

自社が所有する太陽光発電設備で発電した電力の使用量は基本的に無料です。

2022年は以下の通り電気代が高騰しました。このコストと今後の変動リスクを防ぐことができるのは大きなメリットです。


(出典:新電力ネットから筆者作成 https://pps-net.org/unit#)

*「基本的に無料」というのは、自社が所有する設備から発電した電力であっても、電気の利用に料金が発生する場合があるためです。その場合の代表例が、遠隔地の施設で発電している場合です。この場合は、送電する費用がかかる可能性があります。

災害に備えた事業環境を構築できる

電力を需要する敷地内に発電設備を設置する場合は、災害時でも電気を利用できます。

通常は電力を送電ネットワークを介して取得しています。そのため、災害で送電ネットワークがとまった場合は、電気の供給も止まってしまいます。

しかし、需要地に発電設備があれば、送電ネットワークを介する必要がありません。そのため、災害時でも電気を使い続けることができるのです。

自社の強みとして売り出せる可能性がある

二酸化炭素の排出量が少ない事業は、それ自体が強みになり新しい取引先を見つけられる可能性があります。

なぜ二酸化炭素の排出が少ない企業にビジネスチャンスがあるのかというと、上場企業を中心に、自社製品の「製造〜利用〜廃棄」全ての段階で排出される二酸化炭素量の排出を削減していこうという動きがあるためです。

実際、国際的なレベルでは「産業革命以降の気温上昇を1.5度未満へ」するという目標を掲げた条約が2015年にCOPという国際会議で締結されています。これをパリ協定と言います。

また民間レベルでは、投資家が企業の環境などへの対応をもとに投資判断をするというESG投資が盛り上がり始めていたり、アメリカの金融当局が2023年度から企業の活動における二酸化炭素排出量の開示の義務化を検討していたり、日本ではすでに多くの上場企業が自社の二酸化炭素排出量の開示を開始しています。

そのため、発電時に二酸化炭素が発生しない太陽光発電を導入することで、自社の活動によって排出される二酸化炭素を削減することは、競争優位につながります。これは、電力利用量が多い産業であればあるほど効果があると言えます。

産業用太陽光発電を導入するデメリット

産業用の太陽光発電の導入には、主に以下のようなデメリットがあります。
①導入費用が高額
②自然災害のリスクがある

それぞれ詳しくみていきます。

導入費用が高額

産業用の太陽光発電設備の導入は、費用が高くなる傾向にあります。なぜなら太陽光発電設備自体が、発電容量が大きくなればなるほど高額になってしまうからです。

例えば2021年12月に発表された経済産業省の調査では、10〜50kW の太陽光発電設備の平均的な導入費用は「25万円 / kW」となっています。つまり、産業用になると容量が10kW以上であるため、250万円〜の導入コストがかかるということです。

自然災害のリスクがある

太陽光発電設備を地上に設置するタイプの場合は、洪水や土砂崩れなどのリスクがあります。

導入する際の費用の目安

前述の2021年12月に発表された経済産業省の調査から引用します。

容量別の太陽光発電設備の平均導入費用は以下の通りです。
・10 〜 50kW の場合は「25万円 / kW」
・50 〜 250kW の場合は「18.3万円 / kW」
・250 〜 500kW の場合は「17.2万円 / kW」
・500 〜 1,000kW の場合は「17.6万円 / kW」
・1,000kW 〜 の場合は「20.5万円 / kW」

導入コストを抑えるための制度

太陽光発電の導入はその初期費用の高さが課題になることが多いです。そこで、その課題を克服するための方法をご紹介します。

太陽光発電導入の補助金を利用する

例年、国や都道府県から太陽光発電の導入に使える補助金が公募されています。お住まいの都道府県からの補助金をチェックすることをお勧めいたします。

また、補助金ではなく融資ですが日本政策金融公庫を使うという選択肢もあります。
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/15_kankyoutaisaku.html

税制措置を利用する

中小企業経営強化税制を活用すると、有利に太陽光発電設備を導入することができる可能性があります。この制度で活用できるのは以下の二つのどちらかです。
①即時償却
②税額控除

即時償却の場合は、設備の導入費用全額を損金算入できます。つまり、1000万円で設備を導入したら、その年に1000万円全額を損金として参入できるということです。

税額控除の場合は、資本金が3000万円以上1億円以下の法人の場合には7%、それ以外の場合は10%を法人税から控除できます。つまり、1000万円で設備を導入したら、70〜100万円法人税を控除できるということです。

PPAという契約方法

PPAという太陽光発電の契約方式であれば、初期費用とメンテナンス費用は負担せずに太陽光発電の導入ができます。

しかし、PPAでは電気代の節約効果は自社で導入するよりも見込めません。なぜなら、PPAでは設備の所有者はPPA業者になるからです。そのため、発電した電気を利用する際には利用料が発生してしまいます。

オンサイトPPAの概要

PPAについては、詳しくはこちらの記事にまとめています。

導入までの工程

太陽光発電の契約〜運転が開始するまでのフローは一般的には以下の通りです。事業者によっては、補助金や電力会社への系統接続の申請を代行してくれるところもあります。

まとめ

ここまでで、太陽光発電の産業用についてその「定義」と、「導入するメリット・デメリット」、「導入に要する費用の目安」、「導入までの工程」を確認してきました。

太陽光発電の導入は全体的に見ると、新たなビジネスチャンス、もしくは脅威への対策としてお勧めです。

新たなビジネスチャンスとしては、バリューチェーン全体で二酸化炭素削減を進める動きがあるため、自社の二酸化炭素排出量を抑えることができれば新たな取引先を見つけることができる可能性があります。

脅威への対策としては、高騰傾向にある電気代を抑えたり、災害対策の非常電源としても使えるためビジネスの持続可能性を高めることができます。

逆にデメリットとしては導入にコストがかかったり、自然災害によるリスクもあります。しかし、コスト面でのデメリットを緩和する政策として補助金や税制の優遇処置も存在しています。

これらのことからも、上述のメリットはデメリットを補って余りあるものだと言えます。

この記事が太陽光発電の導入検討の助けになれば幸いです。

参考

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