建設業界の脱炭素の課題と目標
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日本の建設業界の脱炭素化に向けた課題と目標は?企業の取り組み事例も紹介

脱炭素とは?

脱炭素とは、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出をゼロにする取り組みのことで、世界共通の目標です。日本でも脱炭素に向けた活動を実施することを国レベルで宣言しています。実際、2020年10月に菅善偉当時首相が2050年度までに温室効果ガスを実質ゼロにする「カーボンニュートラル宣言」をしています。

建設業界の炭素排出量はどれくらい?

建設業界による炭素排出量を大きく二つに分けてみてみます。一つ目は、建築物を作る際に排出される量です。そして、二つ目は住宅などの建築物を利用する際に排出される量です。

次に一つ目の、建設段階での排出量です。2018年度のデータでは、建設機械からの排出量は、約571万トンで、産業部門のCO2排出量1.4%を占めています。

次に二つ目、建築物の利用段階での排出についてです。環境省の「2020年度(令和2年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について」から部門別CO2排出量のデータをみると、住宅や建築物を利用することによる排出量は33.3%で、全体の約 1/3 を占めています。以下のグラフの「家庭部門」、「業務その他部門」が該当します。

2020年度の日本のCO2総排出量の部門別内訳

建設業界の脱炭素に向けた課題は?

建設業界の脱炭素に向けた課題は二つあります。一つ目は施工段階での排出量が多いことです。建設現場では各工程で重機や車両、機器などを使用します。その燃料として灯油、軽油、重油や電力が使われるため、多くのCO2が排出されます。

二つ目は施工後の建築物運用時の排出量が多いことです。CO2排出量は、建築物の施工段階よりも施工後の運用段階の方が圧倒的に多いという特徴があります。施工された建築物は長く使用されるため、運用段階で環境負荷の少ない建築物の実現が求められています。

建設業界の脱炭素に向けた目標は?

建設業界におけるCO2排出量削減について、国土交通省は2つの目標を設定しています。

一つ目は、2050年までに施工段階におけるCO2排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラルの実現です。二つ目は、2030年度に施工後の建築物における温室効果ガス排出量を2013年度を基準にして約40%削減することです。

また、日本建設業連合会も「2050年のカーボンニュートラル」に向け、施工段階におけるCO2排出量削減についてより具体的な二つの目標を設定しています。日本建設業連合会とは、一定規模以上の総合建設業者などで構成されている建設業界の連合組織です。

一つ目は、2030年〜2040年度の早い時期に、2013年度よりも40%削減することです。そして二つ目は、スコープ1,2排出量を2050年までに実質ゼロとすることです。

これら二つの目標は、施工高1億円あたりのCO2排出量を対象にしています。(施工高とは、施工が完了した部分の受注高のことです。)

建設業界の脱炭素に向けた取り組みは?

建設現場での取り組み

建設現場における温室効果ガス排出削減対策は大きく二つ挙げられます。

一つ目は、建設現場における使用エネルギー量の約70%を占める軽油の使用量削減についての取組みです。日本建設業連合会は会員企業による軽油代替燃料の利用を促進するために、「建設業における軽油代替燃料利用ガイドライン」を設定しています。

二つ目は、ICTを活用した作業の効率化による工期の短縮、つまりICT施工の取り組みです。ICT施工とは、高度なITシステムや機能をもった建設機械を使用した施工のことです。例えばこれらの機能には、建設機械に工事の設計データを搭載し運転手へ作業位置をガイダンスする機能や、運転手の操作の一部を自動化する機能があります。これによって建設プロセスの各工程の効率と精度を上げ、工期自体を短縮させることで、CO2排出量の削減を図ります。

建築物の利用時の排出削減に向けた取り組み

建築物の利用時の排出量削減に向けた取り組みとしては、令和4年6月に公布された法律があります。これは「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」と呼ばれています。

この法律は2025年度までに、現行では中大規模の非住宅にのみ求められている省エネ基準への適合を全ての新築住宅・非住宅に義務付けています。ここでいう省エネ基準とは、「外皮基準」という屋根・外壁・窓などの断熱性能における基準と、「一次エネルギー消費量基準」という住宅で使うエネルギー消費量の基準を指しています。

建設業界の企業の脱炭素に向けた取り組み事例

鹿島建設

鹿島建設では、持続可能な社会を「脱炭素」「資源循環」「自然共生」の3つの視点でとらえ、2050年までに鹿島が達成すべき将来像を表現した「鹿島環境ビジョン」を策定しています。その中では、2030年に2021年度を基準として全社の温室効果ガス排出量(スコープ1・2)の原単位を40%以上削減すると掲げています。

CO2削減の取り組みは、全ての建築現場で施工中に発生するCO2排出量等を可視化できる「環境データ評価システム(edes;イーデス)」を開発しました。これまでは、全国のサンプル抽出した現場を調査しCO2排出量を割り出したもので全社の排出量を把握していましたが、システム開発により現場ごとの排出量を把握したうえで、状況に応じた効果的なCO2の削減対策を行うことができます。

また、CO2排出量をゼロ以下にする持続可能な環境配慮型コンクリート「CO2-SUICOM」を開発
し、各所で適用されています。CO2-SUICOMは、コンクリートが固まる過程でCO2を吸い込みコンクリート内部に固定します。大量のCO2を吸収させることを可能にし、コンクリート製造時におけるCO2排出量を実質ゼロ以下にすることに成功しました。

清水建設

清水建設は脱炭素社会へ向け「SHIMZ Beyond Zero 2050」を策定しています。ゼロの先にある豊かさをつくることを掲げ、事業活動により自ら排出するCO2排出量と、設計・施工物件の運用時におけるCO2排出量を2050年度にゼロとする目標を設定しています。

脱炭素の取り組みとして、2013年に日本で初めてのZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)の設計施工を実現しました。太陽光発電パネルを屋根全体に設置した太陽光発電や、バイオマス発電(地元産の木質資源)でエネルギーをつくる技術を採用しており、45%の省エネルギーを実現し、残りの55%は地域の資源を活かしてエネルギーを創り出すオフィスの“炭素ゼロ”──ゼロ・エネルギー・ビルを実現しています。

竹中工務店

竹中工務店は「人の感性や創造性を高め、自然を活かし、ライフサイクル CO2ゼロからカーボンニュートラルな社会の実現を目指す」を環境コンセプトとして策定し、脱炭素社会の実現に向けた取組みをしています。CO2排出量削減目標は、2030年までに2018年を基準として施工時については30%削減、設計した建物の運用時については40%削減することとしています。

具体的な取り組みとしては、施工ロボットや作業支援機械の開発・導入や、AIによる自動運転、操作アシスト重機の活用をしています。また建物の運用段階のCO2削減の取組みとして、ZEB(ネット・ゼロエネルギー・ビル)を多数手がけています。

参考