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太陽光発電、FITは利用した方が良い?制度の内容や認定の流れ解説

Image by NikolayF.com from Pixabay

太陽光発電の導入を検討していると、「FIT」という単語をよく目にすると思います。FITは、発電した電力を固定価格で買い取ってくれる制度です。しかし、その内容は詳しくはわからないという方も多いのではないでしょうか。

この記事では、FIT制度の内容やどうやったら制度を利用できるのか、そもそもFITは使うべきなのかなど詳しく説明します。

FITの仕組み

FITとは「固定価格買取制度」と言い、発電した電力を国が定める固定価格で、電気事業者に買い取ってもらえる制度です。(買取価格は設備の容量によって異なります)

電気事業者の買取りに必要な費用の一部は、国民が電力の使用量に応じて負担しています。これを再エネ賦課金と言います。

FITのメリット

FITを利用するメリットとしては、売電収入を上乗せできる点が挙げられます。

FITを利用することで売電価格は、しない場合に比べると平均して約2.5円お得になります。
各電力会社の買取価格は以下の通りです。(平均すると約7.5円です)


(出典:各社HPより筆者作成)

例えば、20kwの設備をもっている発電事業者が発電した電力の20%を売電していると仮定した場合、年間の売電収入の上乗せ分は10,000円になります。

以下に、計算の詳細を記します。

まずは、発電量についてです。太陽光発電に関する調査や普及活動を行なっている太陽光発電協会によると、太陽光発電設備1kWあたりの年間発電量は1,000kWhとされています。つまり、20kWの設備の場合は20,000kWhです。

次に、売電量についてです。今回の試算では20%を売電しているため、総発電量が20,000kWhだと、4,000kWhです。

そして、売電収入の上乗せ分です。各電力会社の買取価格は平均すると7.5円です。そのため、FITによる上乗せ分は2.5円です(10kW以上の設備の買取価格を適用)。

最後に、年間の上乗せ分の計算結果についてです。年間の総売電量が4,000kWh、FITによる上乗せ分は2.5円とすると、10,000円の上乗せになります。

FITのデメリット

FITを利用するデメリットとしては、以下2つ挙げられます。
①認定を得るための作業や、認定取得までに時間がかかる
②FITを利用すると補助金などが使えない可能性が高い

①については、認定を取得するためには経済産業省に「事業計画認定」をしてもらう必要があります。この認定は申請から3ヶ月以内で処理されることが標準として定められています。そのためFITを使う場合は、使わない場合に比べると、運用開始が3ヶ月程度先になってしまいます。

②については、国や地方公共団体から出されている太陽光発電の導入補助金の条件として「FIT(や、その後継の制度であるFIP)の認定を受けていない」ことを条件にしているものが多くあります。

FITの買取価格の変遷(卒FITの話)

FITでは10年間(10kW未満は20年間)、固定価格で発電した電力を買い取ってもらえます。しかし、その買取価格は近年下落傾向にあります。以下は、買取価格の推移を示したものです。


(出典:経済産業省・資源エネルギー庁「買取価格・期間等(2012年度~2021年度)」.
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/kakaku.html、「買取価格・期間等(2022年度以降)」.
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/fit_kakaku.htmlから筆者作成)

太陽光発電の導入で「自家消費と余剰売電」を行い、事業の安定性を高める

現状、太陽光発電を導入する際の主流となる考え方は、「自家消費+余剰売電」です。この背景には、買取価格の下落と電気料金の高騰があります。

買取価格の下落に関しては、上述の通り、2010年台前半のFITが開始された頃と比較すると大きく落ちています。FITでの買取価格が高かった2010年台前半は、全量売電が主流でしたが、現在は全量売電をしたとしても大きく事業収益が出るわけではない状況です。

また、電気料金の高騰に関しては2022年に顕著な影響が出ました。ウクライナ戦争や円安の進行が主な原因と考えられています。電気料金は、外部要因としてコントロール不可能なものであり、またその上昇幅もかなり大きい場合があり得ることが多くの人に驚きをもって認識された年でした。


(出典:新電力ネットから筆者作成 https://pps-net.org/unit#)

これら二つの理由から、全量売電ではなく、「自家消費と余剰売電」をメインに太陽光の導入を行うことが多くなっています。

補助金が使えるなら補助金を、そうでなければFITの利用を!

FITを使うべきか否かを判断するための指標として、「FITによる売電収入の上乗せ分」と「補助金を適用することで削減できる導入費用などの額」のどちらが大きいかが一つの材料になります。

つまり、FITによる売電収入の上乗せ分(10年間の合計)が、補助金を使って賄える額より大きければFITを使った方が良いと言えそうです。

しかし、FITによる買取価格は減少傾向であるため、今後も売電収入の上乗せ分は年々減っていくことが予想されます。そのため、補助金が使えるのであればFITよりも補助金を使って設備を導入する方が良いと言えそうです。

FITの認定を取得までの流れ

FIT認定を取得するには、大きく以下の2つを行う必要があります。
①電力会社との接続契約
②(環境アセスメントが必要な場合)アセスメント手続きの開始
③経済産業省への事業計画認定申請

①に関しては、発電設備から送配電線に電気を流すための契約です。電線への接続可否や、接続に必要な工事費用の概算などを算定します。これは、③の前に行っておく必要があります。この工程にかかる標準的な期間は3ヶ月程度です。

②設置する場所によっては、法律や条例で環境アセスメントが求められている可能性があります。この場合は、③の前に手続きを開始する必要があります。

③に関しては、経済産業省に対して事業計画を提出し、FITとして認定指定もらうための処理です。この工程にかかる標準的な期間は3ヶ月です。

FITの認定を受けるために必要な事項

FIT認定を受けるためには、上記の電力会社との接続や、環境アセスメントの実施(法律や条例で定めがある場合)以外にも、以下の2つの確認が必要です。
①自家消費比率を30%にする
②災害時に活用可能な状態にする

①に関しては、売電は余剰分のみ認められています。以前認められていた全量売電がなくなったということです。

②に関しては、50kW以下の小規模な太陽光発電設備に対してのみ適用される制度です。災害時の緊急用電源としての活用ができることがFIT認定の条件になっています。

まとめ

太陽光発電をお得に運用するためには、補助金が使えるのであれば補助金を、そうでなければFIT(もしくはFIP)制度を利用しましょう。

FIT制度の認定を受けるためには、多少の手間がかかります。例えば、認定されるための手続きがあったり、設備が動き始めた後も一定の基準に従って発電設備の運用をすることが求められたりします。

しかし、これらの手間とFIT認定によって得られるメリットを天秤にかけた場合、メリットの方が大きいと言えます。なぜなら、一つにはFITで得られる売電収入の補助金額が挙げられます。10年という長期にわたる補助期間で得られる収入増は、場合によってはかなりの金額になります。

また、もう一つの理由はそもそもFITで求められる内容についてです。これ自体、一般的に太陽光発電設備を「安全に安定して」長く使い続けるための基本的な内容です。そのため、認定を受けるために全く別の余計な手間がかかるわけではないためです。

この記事の内容が、太陽光発電やFITの導入、検討の一助になれば幸いです。

参考

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