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SDGsと農業の関係とは?日本における農業の課題と取り組み事例を紹介

SDGsとは

SDGsとは、世界中の人達が平等に、安全に幸せに暮らし続ける事が出来る社会を実現するために作られた世界全体の目標です。地球上の「誰一人取り残さない」ことを基本理念とし、17の目標と169の具体的な達成基準で構成されています。目標達成は2030年までとされており、日本でも2016年にSDGs実施指針を策定しています。

日本の農業における現状と課題

ここでは「環境」「生産」「消費」の3つの点で考えていきます。

環境

農業と環境の関わりは、大きく「生産」と「消費」段階に分けられます。

まず、農業生産と環境の関わりについてです。農業生産と環境の関係では、二つの問題があります。一つ目は、化学製品の使用による影響です。二つ目は、生産時に使われる機器や設備が消費する燃料の問題です。

生産時の一つ目の課題である、化学製品の使用による影響についてです。これは、生産効率を優先しすぎた結果引き起こされる、化学肥料や農薬の不適切な使用に対する懸念です。化学肥料などの使い過ぎにより、土壌や河川、海を汚染し、生態系のバランスを脅かす等周辺の環境に悪影響を及ぼすことがあります。

生産時の二つ目の課題である、使用する機器や設備の燃料消費についてです。これは、土地を耕したり収穫作業などで使う機械が消費する燃料や、ビニールハウス栽培で利用されることが多い冷暖房が消費する燃料です。これらの燃料消費の際に温室効果ガスが放出され、温暖化の原因になります。

次に、食料消費と環境面の関わりについてです。食料消費と環境の関係では、食品ロスの問題があります。

食品ロスとは、食べられる食品が買いすぎや、食べ残しなどの様々な理由でゴミとして廃棄されてしまうことです。農林水産省の「食品ロス及びリサイクルをめぐる情勢」によると、令和2年度は事業系・家庭系を合わせると約522万トンの食品ロスが発生しています。このうち家庭から出る食品ロス量は約247万トンです。食品ロス量を国民1人当たりに換算すると1年で約41kg排出され、1日約113g茶碗1杯のご飯に近い量の食品がゴミとして廃棄されています。廃棄された食品を焼却処分するために燃料が使われ、二酸化炭素が排出され、温暖化を促進します。

この様に農業は環境と密接な関わりがあり、SDGs目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」、11「住み続けられるまちづくりを」、12「つくる責任つかう責任」、13 「気候変動に具体的な対策を」、15「陸の豊かさを守ろう」に関係しています。

生産

日本の農業生産の課題は大きく2つあります。一つ目は、農業人口の高齢化です。そして二つ目は、就業者数の減少です。

一つ目の農業人口の高齢化についてです。農林水産省の「農業労働力に関する統計 基幹的農業従事者(個人経営体)」によると、令和3年の農業従事者の年齢別の割合は65歳以上が90%を超えていて、平均年齢は67.9歳となっています。数年後、数十年後には加齢により農業から離れて行く人は増て、農業人口が減っていくことが充分に想定されます。

二つ目の就業者数の減少についてです。農林水産省の「令和3年農業構造動態調査結果 農業労働力推移」によると、農業の就業者数は年々減少の一途を辿っており、令和3年は前年より4.5%も減少しています。

これら2つのことから、農業従事者が高齢化している上に就業人口も減っているため、後継者が不足し知識や技術の継承が途絶えてしまうことが懸念されています。

SDGsは生産者の「労働」と「経済」にも関連していて、目標8「働きがいも経済成長も」、9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に大きく関係しています。

消費

日本の食糧消費の大きな課題は、食料自給率が低いことです。農林水産省によると、令和3年度の国内食料自給率はカロリーベースで38%になっています。食料自給率低下の原因は、自給率の低い肉類や油脂類の消費量が増えたこととされています。食料自給率が低い、つまり食糧を外国からの輸入に頼っていると、何らかの理由で輸入ができなくなった場合に食糧危機に陥る可能性があります。

食料の消費面では、SDGs目標2「飢餓をゼロに」、3「すべての人に健康と福祉を」と関係があります。

農業の環境負荷軽減に向けた取り組み例

農業では、生産活動における化学肥料やエネルギー利用によって環境負荷が発生することを確認しました。そこで、化学肥料の使用を抑え、環境負荷の低い農業の取り組みがいくつか行われています。

こうした取り組みは有機農業と呼ばれています。有機農法とは化学的に合成された肥料及び農薬を使用しない、遺伝子組換え技術を利用しない、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減する農業生産の方法を用いて行われる農業です。

有機農業には例えば、牛糞や籾殻などの有機物を積み上げ微生物の力で発酵させた堆肥を使った農業があります。他にも、カバークロップ(緑肥)の栽培も挙げられます。これは、稲を収穫した後でレンゲなどを栽培し、その土地を耕すときに一緒に混ぜてしまうことで天然の肥料とするやりかたです。

持続可能な生産に向けた取り組み例

農業は担い手の高齢化や従事者の減少といった課題に直面しています。そこで人手不足解消や農業の労働の省力化、生産者が無理なく農業に従事できるように収入を向上させるための仕組みづくりが行われています。主な取り組みは三つあります。一つ目は、6次産業化です。二つ目は、営農型太陽光発電の導入です。三つ目はスマート農業の導入です。

6次産業化

6次産業化とは、生産だけでなく、二次産業である食品加工、三次産業である流通・販売にも取り組み、それによって生産物の価値を高める取り組みのことです。これによって、農業所得の向上、さらには地域の産業と新規雇用を創る目的があります。ちなみに、「6次産業」の6は「1次産業の1」×「2次産業の2」×「3次産業の3」のかけ算の6を意味しています。

導入例としては、群馬県富岡市の「とみおか繭工房」があります。これは、パーソルサンクス(株)が富岡市で実施している事業です。「廃棄しない養蚕(ゼロエミッション)」の実現を目指して、桑の栽培から繭の生産、シルク製品の制作を行う以外にも、廃棄される繭や羽毛を活用して化粧雑貨の開発などを行なっています。また、従業員の8割を障害者雇用としています。このように、6次産業化を通して養蚕の価値を向上させると同時に、農福連携によって高齢化による担い手不足の解消、障害者が活躍できる就労の場の拡大など、地域の活性化に繋がっています。

営農型太陽光発電

営農型太陽光発電とは、農地の上部空間に太陽光発電設備を設置し、太陽光を農業生産と発電とで共有する取組です。作物の販売収入に加え、発電電力の自家利用による農業経営の更なる改善、売電による継続的な収入が得られる事で所得向上が期待できます。

導入例としては、静岡県掛川市の株式会社流通サービスがあります。同社はお茶の生産を行っています。営農型太陽光発電を導入した大きな理由は、改植・新植などの未収益期間であっても売電収入を確保できる点に注目したためでした。しかし、売電以外にも茶葉の栽培の省コスト、省力化に役立っています。それは、従来は茶葉に直射日光を当てないようにするために被覆材を使い茶葉を覆っていましたが、設置した太陽光パネルが代わりに太陽光を遮ってくれているためです。

スマート農業の導入

スマート農業とは、ロボット、AI、IoTなど先端技術を活用する農業です。農業は人手に頼る作業や熟練者でなければできない作業が多く、労働力不足が進んでいるという背景もあり、省力化、負担の軽減が求められていました。スマート農業を導入することで作業の自動化などができ、それによって生産性の向上が期待されています。また、ドローン・衛星によるセンシングデータや気象データをAIによって解析したデータを活用した高度な農業経営が期待されます。

導入例の一つ目は、自動運転田植機の活用です。監視者がほ場周辺にいる状態で、旋回も含めて自動で田植えを行い、作業人数の省人化や作業時間を短縮できます。

導入例の二つ目は、キャベツ自動収穫機の活用です。これはAIを用いてキャベツを認識し、収穫、コンテナへの収納、コンテナ交換も自動で行います。これによって、収穫・運搬作業にかかる時間と人手が大幅に減り、負担が軽減されています。

持続可能な食料消費に向けた取り組み例

日本の食料消費に関しては、自給率が低いという課題があります。この課題に対応するためには、地産地消の取り組みを進めることが重要になります。地産地消とは、地域で生産された農産物を地域で消費していこうというものです。地産地消を進めることは、地域の農業の応援につながるため地域の活性化になるばかりでなく、流通の距離も短いので輸送に必要となる温室効果ガスの排出も削減されます。

地産地消の例としては、全国各地で農産物直売所が開設されていたり、病院、高齢者施設や学校給食で地元で生産された食品を積極的に取り入れる取り組みが行われています。

参考

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/attach/pdf/161227_4-52.pdf#page=8
https://www.env.go.jp/recycle/foodloss/pdf/houkokusyo_r03.pdf#page=21
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/011.html
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/ohanasi01/01-01.html
https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/08.html
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kekka_gaiyou/noukou/r3/index.html
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/kakyou_chokubarai/attach/pdf/mainp-93.pdf
https://www.maff.go.jp/j/nousin/inobe/6jika/attach/pdf/yuryo-18.pdf#page=12
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/einou.html
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/#smart
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/attach/pdf/index-58.pdf#page=9
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/attach/pdf/index-58.pdf#page=14
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/attach/pdf/index-58.pdf#page=22

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