株式会社日立製作所のサステナビリティ経営分析(炭素排出量編)
サステナビリティ経営 企業

企業のサステナビリティ経営分析(炭素排出量)ー株式会社日立製作所2020年

炭素排出量の概要

株式会社日立製作所のCO2排出量の推移_スコープ別

排出量の割合を見てみると、スコープ3の排出量が大きな割合を占めています。その中でも「製品・サービスの使用」の割合が80%を超えているのが以下の画像からわかります。また排出量の推移を見てみるとスコープ3において、排出量は急激に減少傾向にあります。

株式会社日立製作所のバリューチェーン別CO2排出量
http://サステナビリティレポート2020

株式会社日立製作所の2030年に向けた脱炭素の目標

株式会社日立製作所では、脱炭素に関連する目標を以下の2つ置いています。
1. バリューチェーンを通じて2030年度 CO₂排出量50%削減(2010年度比)
2. 事業所(ファクトリー・オフィス)2030年度カーボンニュートラルの達成

目標1のバリューチェーンとは、製品の製造に関わる全工程(部品の調達、生産、輸送、販売、廃棄、リサイクル)を指しています。このバリューチェーン全体を通しての排出量は、2050年にカーボンニュートラル、2030年は中間目標として50%の削減を定めています。また、目標2はバリューチェーンの中でも特に生産に関わる部分ですが、目標を前倒して2030年度にカーボンニュートラルの実現を目指しています。

目標に向けた活動

1. バリューチェーンを通じて2030年度 CO₂排出量50%削減(2010年度比)

同社のバリューチェーンの中で一番排出量が多いのが「製品・サービスの使用時のCO2排出量」です。この排出量の削減を進めていくために、「製品・サービスの使用時CO2排出量原単位削減率」を設定して各製品・サービスごとに削減目標を定めています。

2. 事業所(ファクトリー・オフィス)2030年度カーボンニュートラルの達成

ファクトリー、オフィスでそれぞれエネルギー効率の改善や設備の更新による設備効率の改善を実施しています。中でも力を入れているのは、日立インターナルカーボンプライシング(HICP)です。これは社内で独自に炭素発生量もしくは削減炭素量に価格付けを行う仕組みのことです。これによって、CO2削減のための設備投資をより拡大しやすくすることを狙っています。実際に、2020年度のHICPにより実施された投資は22件(2億5,000万円)で、年間447tの削減効果がありました。(CO2削減実施効果は前年度比0.8%向上)

目標別の実績検証

1. バリューチェーンを通じて2030年度 CO₂排出量50%削減(2010年度比)

2020年度は、目標としていた「CO2排出量原単位を基準年度の2010年度の20%削減」を達成しました。
CO2排出絶対量の推移を見ると直近3年間は年平均で34百万トンの削減を実現しています。その結果、2018年には約141.5百万トンの排出だったのが2020年は72.4百万トンにまで減少しています。しかし目標であるCO2排出量の50%削減の基準量が示されていないため、進捗状況が良いか悪いかは判定しかねる状況です。

2. 事業所(ファクトリー・オフィス)2030年度カーボンニュートラルの達成

2020年度は、「CO2排出量原単位*の改善率を2010年度の8%削減」としていましたが、1.4%にとどまりました。これは新型コロナウイルス感染症の影響で生産が悪化し、設備の利用効率が悪化したりしたためです。
※CO2排出量を分子にして、分母に事業所ごとの活動量を設定して算出した値です。
CO2排出絶対量の推移を見ると直近5年間は年平均で500千トンの削減を実現しています。その結果、2016年には5,322千トンの排出だったのが2020年は3,365千トンにまで減少しています。そのため、目標である2030年度のカーボンニュートラルは実現されそうです。しかし2010年からの推移で見ると、この10年間で年平均約60千トンの削減にとどまっています(2010年は3,914千トン)。そのため、今後10年で600千トンの削減にとどまり目標の達成は難しそうにも感じられます。ここの実現可能性は、来年の数字を見てここ5年間の推移が持続可能なのかが解明されそうです。

株式会社日立製作所のファクトリー・オフィス・発電所でのCO2排出量推移
「サステナビリティレポート2021https://www.hitachi.co.jp/sustainability/download/pdf/ja_sustainability2021.pdf#page=47」より引用

まとめ

CO2の排出量に関しては、独自のインセンティブシステムを導入していたり、バリューチェーン全体でのCO2排出量が過去3年で年平均34百万トンの削減が行われていてとても進捗が順調に見えます。しかし、一方で目標値の元になる基準値が明確に示されていないところが課題として挙げられます。
目標の明確さ: △
目標の野心度合い: o
アクションプランの明確さ: o
実績の明確さ: x

参考リンク

株式会社日立製作所「日立 サステナビリティレポート2021」
https://www.hitachi.co.jp/sustainability/download/pdf/ja_sustainability2021.pdf
株式会社日立製作所「日立 サステナビリティレポート2020」
https://www.hitachi.co.jp/sustainability/download/pdf/ja_sustainability2020_20.pdf
株式会社日立製作所「日立 サステナビリティレポート2019」
https://www.hitachi.co.jp/sustainability/download/pdf/ja_sustainability2019.pdf