企業のサステナビリティ経営分析(炭素排出量)ーキリングループ2020年
企業のサステナビリティ経営分析(炭素排出量)ーキリングループ2020年
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企業のサステナビリティ経営分析(炭素排出量)ーキリングループ2020年

炭素排出量の概要

キリングループのスコープ別CO2排出量推移と目標

排出量の割合を見てみると、スコープ3の排出量が大部分を占めています(約80%)。
また過去2年間の排出量の推移を見てみるとスコープ1, 3は1~3%の微減にとどまっています。しかし、スコープ2は2年連続で10%前後の削減と比較的大きな削減を達成しています。

キリングループの2030年に向けた脱炭素の目標

キリングループでは、脱炭素に関連する目標を以下の4つ定めています。
1. 「SBT1.5℃」目標の承認を取得する
2. 2030年にGHGのスコープ1, 2の合計排出量を2019年比で50%削減する
3. 2030年にGHGのスコープ3の排出量を2019年比で30%削減する
4. 2040年に使用電力の再生可能エネルギー比率100%を目指す

各目標による想定される脱炭素効果を算出する

2019年度の同社のスコープ1, 2の排出量は約94.9万トンでした。そのため、50%の削減を達成すると約47.45万トンのCO2排出が削減される計算です。これは、日本人の平均的な年間CO2排出量が8.7トン(※)なので約5.5万人分の削減に相当します。
※世界銀行のデータより

また同社の同年度のスコープ3の排出量は410.7万トンでした。そのため、30%が削減されると123.2万トンが削減される計算です。これは日本人約14.2万人分の排出量を削減することに相当します。
上記より、同社の目標が2つ達成されると日本人19.6万人程度のCO2排出量を削減されることが期待できます。

目標に向けた活動

スコープ1, 2の削減に関しては、大きな方針として「①省エネ推進」、「②再エネ拡大」、「③化石燃料からの切り替え」を据えています。2030年の目標であるスコープ1, 2からの排出量を50%削減するために、①省エネと②再エネ拡大することで対応する想定です。そして2050年のネットゼロの達成に向けては「③化石燃料からの切り替え」を実施することで対応する想定です。具体的には製造工程で使用する燃料をGHGを排出しない水素などに切り替える想定です。
①省エネ推進に関しては、カギとなるのがヒートポンプシステムです。これは排熱を熱エネルギーとして再利用する仕組みです。2019年からキリンビールの5工場の排水処理場に導入していて、3400tのGHG排出量削減効果がありました。(前年のキリンビール全体の排出量2%に相当)

スコープ3の削減に関しては、排出割合として原料・資材の製造に関する排出が約60%を占めています。そのため、自社での削減と調達先との連携で削減する2つのアプローチを並行して実施しています。

目標別の実績検証

1. 「SBT1.5℃」目標の承認を取得する

2020年12月に承認されました。同社は2017年に「SBT2.0℃」目標の承認を得ていましたが、2020年11月に「SBT1.5℃」に目標をアップグレードしました。

さらに、2022年中により厳しい基準である「SBTネットゼロ」へのアップグレードも予定しています。

2. 2030年にGHGのスコープ1, 2の合計排出量を2019年比で50%削減する

キリングループのCO2削減量実績と目標(スコープ1+2)

2020年度は2019年度対比で7.8%の削減を達成しました。
目標は「2030年にGHGのスコープ1, 2の合計排出量を2019年比で50%削減する」です。この目標を達成するためには毎年4.3万トンの削減量が必要で、計算上は2020年の段階で4.55%の削減が達成されている想定でした。

実際、2018-2020年の平均削減量を見てみると7.4万トンと想定を上回っています。また2020年の削減率実績は、2019年比で7.8%の削減と、想定より約3.3ポイント高い結果でした。

このままの推移でいくと目標は4年前倒しで2026年で達成される見込みです。

3. 2030年にGHGのスコープ3の排出量を2019年比で30%削減する

キリングループのCO2削減量実績と目標(スコープ3)

2020年度は2019年度対比で2.87%の削減を達成しました。
目標は「2030年にGHGのスコープ3の排出量を2019年比で30%削減する」です。この目標を達成するためには毎年11.2万トンの削減量が必要で、計算上は2020年の段階で2.73%の削減が達成されている想定でした。

しかし、2018-2020年の平均削減量は5.9万トンと想定を下回っています。ただし2019→2020年での削減幅が大きかったため、2020年の削減率実績は、2019年比で2.87%で想定より約1ポイント高い結果でした。

このままの推移でいくと、2030年の最終着地は2019年度比で24%と、目標の達成が難しい可能性があります。今後の取り組みに注目したいです。

4. 2040年に使用電力の再生可能エネルギー比率100%を目指す

キリングループの使用電力の再生可能エネルギー比率「実績と目標」

2020年度は使用電力の再生可能エネルギー比率17%を達成しました。
目標は「2040年に使用電力の再生可能エネルギー比率100%を目指す」です。この目標を達成するためには毎年4.2%比率を上げていくことが必要で、計算上は2020年の段階で使用比率は20.7%になっている想定でした。

しかし、2017→2020年の間の平均上昇比率を見てみると4.3%と想定を下回っています。また2020年使用電力の再エネ比率の実績は17%で、想定より3.7ポイント低い結果でした。

このままの推移でいくと2040年の最終着地は約80%で、目標の達成は難しそうです。そのため、今後の取り組みに注目したいです。

まとめ

目標設定に関しては、国際的なイニシアチブであるSBTから「1.5℃」基準の認定を受けていたり、定期的によりチャレンジングな目標にアップグレードする姿勢がとても野心的です。

取り組みの成果については、スコープ1, 2の目標は前倒しで達成できそうなペースです。しかし、スコープ3と再生可能エネルギー利用比率については、現状のペースだと少し厳しい状態です。そのため今後の改善に注目したいです。

・目標の明確さ: o
・目標の野心度合い: o
・アクションプランの明確さ: o
・実績の明確さ: o

参考リンク

・世界銀行:日本人一人当たりのCO2排出量
https://datacommons.org/place/country/JPN?utm_medium=explore&mprop=amount&popt=Emissions&cpv=emittedThing%2CCarbonDioxide&hl=ja
・キリングループ環境報告書2022
https://www.kirinholdings.com/jp/investors/files/pdf/environmental2022.pdf#page=59
・キリングループ「「SBT1.5C」目標・世界最高水準のエネルギーシステムを目指す」
https://www.kirinholdings.com/jp/impact/env/3_4a/SBT1_5/