ICAOによる国際航空の二酸化炭素削減への取り組み
ICAOによる国際航空の二酸化炭素削減への取り組み
ルール

ICAO、国際航空の脱炭素に向けて。二酸化炭素削減の取り組みとSAFの今後

なぜ国際航空分野の排出量に注目するか

CO2排出量が多い

国際航空分野からのCO2排出は増加傾向にあり、現時点でも全世界のCO2排出量の2.4%ほどを占めています。この排出量は、この分野を国家と見立てた場合に、全世界の国別排出ランキングの10位に位置します。(ちなみに、日本は5位です)

CO2以外にも温暖化効果の影響がある

さらに、航空分野の地球温暖化に与える影響は二酸化炭素の排出以外にもあります。例えば、飛行機雲や窒素酸化物といったCO2以外の温室効果ガスです。

特に、飛行機雲は地表から反射した熱を大気中に閉じ込める効果があり、この温暖化効果は飛行機から排出される二酸化炭素以上に強いとされています。

国際航空分野はNDCでカバーされていない

上述の温暖化効果に加えて、国際航空分野はNDCでカバーされていません。国内線はNDCで各国が取り組む対象ですが、国際線についてはその限りではありません。そのため、国連の専門組織であるICAOという組織が削減などに取り組んでいます。

二酸化炭素削減に向けた取り組み

取り組み主体、ICAO

国際航空分野の二酸化炭素排出削減に取り組んでいるのは「ICAO(the International Civil Aviation Organization)、国際民間航空機関」という国連の組織です。これは、1944年に採択されたシカゴ条約に基づき、国際民間航空の発展にむけて各国の協力を促す目的で設立されました。

排出削減目標とCORSIA

国際航空分野のカーボンニュートラル化に向けてICAOは、2016年に二つのことを決めました。一つ目は、2020年以降炭素を増やさないとする目標です。二つ目は、二酸化炭素の排出が規定量を超過した場合に、市場メカニズムを活用して排出削減をするというスキームです(CORSIA)。

しかし、ICAOの脱炭素への取り組みに関してはいくつかの批判がありました。この批判には、例えば以下のようなものが含まれています。

  • 2020年以降の目標が低いこと
  • 航空部門の温暖化に対する影響は、前述の通り二酸化炭素以外もあるが、二酸化炭素にしか言及していない
  • CORSIAの試験フェーズへの参加主体が限定的であること(2022年10月17日現在で118カ国)
  • CORSIAの排出枠のベースラインを意図的に高くしていること(スキーム合意当初は2019と2020年の平均値を想定していたが、2020年はコロナの影響で排出量が大幅に削減されてしまったため2019年の値に変更になった)

具体的な取り組み内容

ICAOは脱炭素の目標を達成するために、三つの方向から取り組みを進めていく想定です。一つ目は、航空機の技術革新による省エネ化です。二つ目は、運行改善による省エネ化です。三つ目は、代替燃料の導入による炭素排出の削減です。

特に三つ目の代替燃料は「SAF(Sustainable Aviation Fuel)」もしくは「持続可能な航空燃料」とよばれていてフライトあたりの二酸化炭素削減に大幅に貢献するとして注目されています。

実際に、以下のICAOの脱炭素のロードマップを見てもSAFの貢献度(期待度)が大きいことがわかります(緑の部分がSAFによる排出削減量)。国土交通省の資料では、ICAOの脱炭素実現に向けた方策の内訳の55%はSAFの導入によるものとしています。

ICAO、国際航空分野の脱炭素へのさまざまな取り組みとその内訳

(出典:ICAO| Climate Change

ICAOの新たな脱炭素取り組み

2022年10月7日まで開催されたICAOの第41回総会で、新たに脱炭素への取り組みに関する発表が行われました。ここには3つの重要な合意が含まれています。一つ目は、2050年の長期目標についてです。二つ目は、CORSIAの新しい排出基準値についてです。そして三つ目は、脱炭素に向けた支援についてです。

一つ目の長期目標に関しては、2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにすることで合意しました。これは、従来の「2020年以降、二酸化炭素排出量を増やさない」という保守的な目標から、大きく方針を転換したことになります。

二つ目のCORSIAの新しい排出基準値については、2024年から使用する値が決まりました。以前は、そもそも排出量の多い2019年の値をそのまま使用していたため批判の対象になっていましたが、その値の85%を基準値とすることが決まりました。

三つ目の脱炭素に向けた支援に関しては、ICAOの加盟国がSAFの導入に関する金銭的な支援の必要性や、SAFの開発と導入に関する包括的な支援を提供するACT-SAF(ICAO Assistance, Capacity-building and Training for Sustainable Aviation Fuels)プログラムへの賛同を示しました。そして、SAFの導入に関するロードマップについて協議する「ICAO Conference on Aviation and Alternative Fuels」が2023年に開催されることが決まりました。

参考