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再エネ 太陽光発電

大規模導入どっちがお得?オフサイトPPAと自己託送の違い

「大規模に再エネの導入をしたいけど、設備を導入する場所がない、、、」こんな課題を抱えていませんか?太陽光発電を大容量に導入しようとすると、共通して問題になるのがどこに設備を設置するのかという点です。

しかし、そんな方に朗報です!この悩みを解決する方法があるのです。それが今回紹介する「オフサイトPPA」と「自己託送」と呼ばれる導入方法です。

オフサイトPPAは、海外では主流になっている太陽光発電の導入方法でもあり、今後日本でも取り組みが増えていくのではないかとみられている方式です。自己託送は、オフサイトPPAと似た部分があり紛らわしいのですが、この記事を読むことで両者の違いがわかり、御社にとってどちらを採用するべきかが判断できるようになります。

それでは、まずはオフサイトPPAについて紹介していきます。

オフサイトPPAの仕組みは

オフサイトPPAとは簡単にいうと、以下のような仕組みです。
①敷地外(オフサイト)に第三者所有の発電設備を導入し、
②小売電気事業者を通して、上記で発電された電気を購入する

オフサイトPPAのメリット

オフサイトPPAのメリットは、大きく以下の4つです。

  • 発電設備は第三者所有であるため、導入と維持の費用を抑えられる
  • 敷地内に太陽光発電設備を導入できない企業でも再エネを導入できる
  • 敷地外に設備を導入するため、スペースの制約を受けずに大規模な再エネ導入ができる
  • 電気料金の変動リスクを抑えることができる

より詳しい内容は、こちらの記事で説明しています。

オフサイトPPAのデメリット

オフサイトPPAのデメリットは、大きく以下の3つです。

  • 契約のハードルが高い
  • 非常用電源として使えない
  • 電気料金の節約効果は、他の自家消費の方法と比べると薄い

より詳しい内容は、こちらの記事で説明しています。

オフサイトPPAの料金の目安は

オフサイトPPAの料金は、通常の電気料金より高めに設定されることが多いようです。また、自家消費を目的とした太陽光発電導入方法の中でも割高です。

これは回避できる電気料金の構成項目がない点、またPPA事業者の利益分も上乗せされるためです。(ただし、現在は電気料金が高騰しているためオフサイトPPAの方が安い価格になっている場合もあります)

※「バランシングコスト」は送配電網を利用して電力を供給する際に発生する費用です。具体的には、電力需給を調整するために必要な「発電計画」と「需要計画」を電力広域運営推進機関に提出するコストと、提出した計画値と実績に差異が出た場合のペナルティ料金を合わせたものを指します。

オフサイトPPAの導入までのハードル

オフサイトPPAの導入までのハードルとして「契約のための審査」があります。

なぜならPPAは長期間で少しづつ利益を回収していくビジネスモデルであり、そのためPPA事業者にとって需要家が長期契約を満了できるか否かの見極めがとても重要だからです。

また、導入する発電設備の容量が大きくなればなるほど、PPA事業者の初期費用も高額になるため審査のハードルもより高くなっていきます。

自己託送の仕組み

自己託送とは簡単にいうと、以下のような仕組みです。
①敷地外(オフサイト)に自社所有の発電設備を導入し、
②自社に上記電力を送電して消費する

以下の概念図では②〜④が該当します。

自己託送の種類
(引用:経済産業省・資源エネルギー庁「地域分散リソースの導入拡大に向けた事業環境整備について」https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/pdf/041_05_00.pdf

自己託送には大きく2つの種類がある

自己託送には需要側と供給側の関係によって、大きく以下の二つに分けられます。
①自己託送
②自己託送(第三者所有モデル)

①は自社もしくは、グループ会社が所有する発電設備から電力の供給を受けることを指します。

②は資本関係のない発電事業者と組合を作り、その組合が所有する設備から電力の供給を受けることを指します。

組合とは

自己託送(第三者所有モデル)では、発電事業者と需要家が同一の組合に属していることが鍵です。その組合に関する規定は、経済産業省が発表した「自己託送に係る指針」で定められていて、以下の全ての要件に合致することが求められています。
①長期間存続すること
②組合員名簿に発電事業者と需要家の氏名または名称が記載されていること
③組合契約書で、電気料金の決定方法と送配電設備の工事費用の負担方法が明確にされていること
④組合員が新規で設立し、維持運用する再エネ設備であること

該当箇所の全文を以下に掲載します。

①当該組合の組合契約書において、当該組合が長期にわたり存続する旨が明らかになっていること。
②当該組合の組合員名簿等に当該供給者及び当該相手方の氏名又は名称が記載されていること。
③当該組合契約書において電気料金の決定の方法及び当該供給者と当該相手方における送配電設備の工事費用の負担の方法が明らかになっていること、その内容が特定の組合員に対して不当な差別的取扱いをするものでないことが認められることその他組合契約書の内容等により当該供給者が当該相手方の利益を阻害するおそれがないと認められること。
④当該組合の組合員が新設した、自ら維持し、及び運用する電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(平成23年法律第108号)第2条第3項に規定する再生可能エネルギー発電設備(同条第5項に規定する認定発電設備を除く。)その他原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される製品以外のエネルギー源を電気に変換する設備及びその附属設備による電気の取引であること。

(引用:経済産業省. 「自己託送に係る指針」. https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/summary/pdf/zikotakusou211118.pdf

二つの自己託送に共通するメリット

二つの自己託送に共通するメリットは、大きく以下の4つです。

敷地内に太陽光発電設備を導入できない企業でも再エネを導入できる

敷地内に空きスペースがなかったり、屋根の形状から太陽光発電設備の導入を諦めていた企業でも導入ができます。なぜなら、発電設備を敷地外に導入するためです。

スペースの制約を受けずに大規模な再エネ導入ができる

現在の敷地のスペースや屋根の面積に制限を受けずに太陽光発電を導入できます。なぜなら、発電設備を敷地外に導入するためです。

再エネ賦課金を大幅に削減できる

再エネ賦課金の支払いを大幅に削減することができます。なぜなら、再エネ賦課金の支払いは「小売電気事業者から電気を供給されている場合」に必要になりますが、自己託送では小売電気事業者からの供給を受けていないためです。

二つの自己託送に共通するデメリット

二つの自己託送に共通するデメリットは、大きく以下の3つです。

大規模な発電所が必要

自己託送では、遠隔地に電気を送る必要があるため、大規模な発電所が必要です。

発電と需要の計画値の提出が必要

自己託送では、電力の供給に送電ネットワークを使うため、電力の需要と供給量の計画値を報告する必要があります。 なぜなら、電力の需給バランスが崩れると電気の品質が乱れてしまうため、これを安定させる必要があるのです。実際に「計画値同時同量制度」と呼ばれる仕組みによって、電気の需要者(小売事業者)と供給者(発電事業者)が、30分単位で需要量と供給量の予測を行い、それを報告することが義務付けられています。 またこの数値通りにいかなかった場合には、「インバランス料金」というペナルティの支払いが発生します。

非常用電源として使えない

自己託送の場合は、発電設備を非常用電源として使えません。 自己託送では、発電所を遠隔地に設置して送電ネットワークを通して電力を需要地まで供給しています。そのため、非常時に送電ネットワークがとまった場合は、自己託送も止まってしまうためです。

自己託送に特有なメリット

自己託送に特有なメリットは、大きく以下の2点です。

電気料金を大幅に削減できる

大幅な電気代の削減が期待できます。 なぜなら自己託送の場合は、PPAとは異なり、発電設備を自社で所有しているため電力料金の支払いが発生しないためです。

余剰電力を自由に扱える

自己託送では、複数拠点へ電力を供給することができます。そのため、拠点の一つが休業日などの理由で電力需要が減ってしまった場合でも、その余剰分を他の施設に回すことができ、効率的な発電電力の利用ができます。

自己託送に特有なデメリット

自己託送に特有なデメリットは、大きく以下の点です。

導入のハードルが高い

導入ハードルには大きく二つあります。一つ目は、自社で大規模な発電設備を導入するための広い土地を獲得する必要がある点です。そして二つ目は、まだ国内では自己託送の導入事例が少ないため、電力会社との協議に時間がかかる点です。

導入の初期費用とメンテナンスコストがかかる

自己託送では、発電設備を自社が所有することになります。そのため、導入コストとメンテナンスのコストが発生します。

自己託送(第三者所有モデル)に特有なメリット

自己託送(第三者所有モデル)のメリットは、大きく以下の点です。

初期費用がかからない

自己託送(第三者所有モデル)では、PPA同様に、発電設備を所有するのは発電事業者です。そのため、需要家には初期費用やメンテナンスコストは発生しません。

自己託送(第三者所有モデル)に特有なデメリット

自己託送(第三者所有モデル)のデメリットは、大きく以下の点です。

託送先が1拠点のみに制限される

自己託送(第三者所有モデル)では、通常の自己託送とは異なり、複数の託送先を持つことはできません。

自己託送(第三者所有モデル)で認められるのは新設の設備のみ

自己託送(第三者所有モデル)では、既存の設備の利用は認められていません。電気事業法
には以下のように規定されています。
当該組合の組合員の需要に応ずるための専用の設備として新たに設置するものに限る。
(引用:電気事業法施行規則第2条第3項 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=407M50000400077 )

どっちがお得?

オフサイトPPAと二つの自己託送(自己託送と第三者所有モデルの自己託送)についてみてきました。それぞれの違いを表にまとめてみます。

初期費用を抑えたい方にとっては、オフサイトPPAか第三者所有モデルの自己託送が向いています。 また、電気代を抑えたい方にとっては以下の順で適しています。
①自己託送
②第三者所有モデルの自己託送
③オフサイトPPA これは、必要な費用項目が少ない順になっています。たとえば自己託送では託送料金のみが必要です。 しかし「第三者所有モデルの自己託送」では、PPA同様に、発電設備は他社が所有しているため、託送料金に加えて電力の利用料金を発電事業者に支払う必要があります。 さらに、それに加えて「オフサイトPPA」では再エネ賦課金も支払う必要があります。

まとめ

ここまでで述べてきた通り、大規模に太陽光発電を導入する方法として「オフサイトPPA」「自己託送」「第三者所有モデルの自己託送」の3つがあります。 それぞれに特徴があり、「自社の敷地で導入できる以上の大規模な太陽光発電の導入がしたい」場合は、ざっくりと以下のような導入の場合分けができます。
・とにかく電気代を抑えて大規模に太陽光発電を導入したい方には「自己託送」
・初期費用を抑えたい方には「オフサイトPPA」
・初期費用を抑えつつオフサイトPPAよりも電気代は抑えたいという場合には「第三者所有モデルの自己託送」 この記事を参考にして、御社の実情に合わせて太陽光発電の導入を検討していただけたら幸いです。

参考