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再エネ 太陽光発電

0円で始められる!太陽光発電のPPA事業のメリットとデメリット

最近太陽光発電は二酸化炭素の削減に加えて、電気料金の削減という点でも注目され始めています。しかし、実際に太陽光発電を始めようと思っても、初期費用やメンテナンスのコストが案外高く二の足を踏んでいる方もいるのではないでしょうか。

そんな方に朗報です!初期費用を極限まで抑えて太陽光発電を始める方法があるのをご存知でしょうか。それが今回紹介するPPA事業です。

この記事では、太陽光発電のPPA事業のメリットとデメリットをみていきます。その中で、あなたが太陽光発電のPPA事業をやるべきなのか、自社所有型との比較の中で解説していきます。

PPAとは

PPAとは電力販売契約のことです。仕組みとしてはこうです。まず、事業者が施設や屋根を発電事業者に貸し出します。そして発電事業者は、提供されたスペースに太陽光発電の設備を設置し、そこで発電された電力をスペースの提供者である事業者に有償で提供します。

ただし、事業者の必要電力量が発電事業者から提供される電力(上図②)では足りない場合、事業者はその不足分を電力会社から購入することになります。また、設備(上図①)の発電量が事業者に供給した電力量を上回った場合、発電事業者はその余剰電力を電力会社に売電します。

ポイントは、太陽光発電の設備を所有しているのは発電事業者であるという点です。これによって、次に説明するようなメリット・デメリットが出てきます。

PPAのメリットは5つ

太陽光発電設備を所有しないことによって、PPAのメリットとして以下の点が挙げられます。

初期費用やメンテナンス費用がかからない

PPAを導入する事業者は費用をかけずに太陽光発電の利用を開始することができます。なぜなら、太陽光発電設備を所有するのは発電事業者であるため、導入とメンテナンスを担うのは発電事業者であるためです。そのため、PPAの導入をする事業者には、導入時の初期費用や、その後のメンテナンス費用が発生しません。

太陽光発電の導入にかかる費用の平均は、経済産業省が2021年12月に出した「太陽光発電について」によると、近年減少傾向にあり「25万円 / kW」となっています。また、メンテナンスの平均費用は、同上の資料によると、「0.54万円 / kW」となっています。

そのため、この費用が発生しないことは太陽光発電を始めるハードルを大幅に下げてくれるメリットであることがわかります。例えばPPAの契約期間を20年と仮定した場合、10kWの設備を導入すると、初期費用が250万円、メンテナンスコストが100万円程度必要になる計算です(20年間の合計)。

再エネ賦課金を払う必要がない

再エネ電力を電力会社が買い取ることを国が保証する制度があります。再エネ賦課金とは、その買取費用の一部を電力利用者に負担してもらうお金のことです。

しかし、PPAでは太陽光発電で発電した電力を自家消費するためこの賦課金がかかりません。賦課金は下図の通り上昇傾向にあるため、賦課金分のコストを削減できるだけでも大変お得です。

再エネ賦課金の推移
(東京電力ホールディングス. 「再生可能エネルギー発電促進賦課金単価」. https://www.tepco.co.jp/corporateinfo/illustrated/charge/1253678_6290.html より筆者作成)

電気代が安くなる可能性がある。

PPAを導入すると電気代が安くなる可能性があります。

まずPPAを導入した場合の電力の購入は次のようになります。一定量の電気をPPA発電事業者から購入し、不足分を従来通りの電気会社から購入することになります。

そのため電気代がいくらお得になるかは、「従来の電気会社に支払う1kWhあたりの電気代
金」と「PPAの発電事業者に対して払う1kWhあたりの電気代金」の差額から計算できます。つまり、PPAの発電事業者に対して支払う金額の方が少なければ電気代金が下がるということです。

契約期間満了後は設備を譲渡される

PPAの平均的な契約期間は20年前後とされていて、この期間終了後は無償で設備を譲渡されます。つまり、それ以降は次の2つの点から更なる経済的な効果を得られます。

まず一つ目は、PPA発電事業者に支払っていた電気料金の支払いがなくなることによって、電気料金が安くなることです。そして二つ目は、余剰発電分があった場合に自社で使用できる太陽光で作った電気が増えることで、電力会社から小運輸する電力量を減らすことができる点です。

非常用電源として利用できる

太陽光発電には自立運転機能がついています。そのため、災害時などはこの機能を活用することで非常用の電源として活用することができます。

PPAのデメリット5つ

長期契約になる

一般社団法人エネルギー情報センターによると、PPAの契約は15〜20年程度の長期になることが多いとのことです。なぜなら、PPAのビジネスモデルは、PPA発電事業者が負担する初期費用やメンテナンス費用などを長期間かけて少しづつ減らしていき、最終的に黒字化するものだからです。

そのため施設の屋根を貸出している場合は、契約期間中に該当する建物の建て替えや移転などの可能性がある場合には注意が必要です。もし途中で解約する場合には、原則として違約金が発生します。

契約期間満了後のメンテナンスは自己負担

PPAの契約期間が終了すると、設備は無償で譲渡されることが多いです。しかし、契約終了後のメンテナンス費用は自社での負担となります。

年間のメンテナンス費用は、2021年12月に資源エネルギー庁がまとめた「太陽光発電について」によると、平均すると「0.54万円 / kW」と報告されています。このメンテナンス費用には「定期点検費用」と「パワコンの交換費用」が含まれています。

他の機器を設置できない場合が多い

PPA事業者は電力を電力会社に売る(売電)によっても利益を得ています。そのため、契約期間中は蓄電池やV2Hなどの機器を追加で設置できない場合が多いです。これは、自家消費量が多くなって、PPA事業者が電力会社への売電に回せる電力量が極端に少なくなることを防ぐ目的です。

自社所有より経済的なメリットは少ない。

自社所有の方が、PPAよりも経済的なメリットは大きいと言えます。なぜなら、自社所有であれば発電分の電気料金に費用は発生しませんが、PPAの場合はPPA発電事業者に電気料金を支払う必要があるからです。

そもそも自社所有の場合にかかるコストは、ざっくりいうと「初期費用」「メンテナンス費用」のみです。しかし、PPAの場合は「PPA発電事業者に支払う電気料金」「契約期間が終了してからのメンテナンス費用」が発生します。

そのため、PPAと自社所有の経済的なメリットを単純に比較するとこうなります。

下図は長期の複数時点でのスナップショットを撮り、その時点で必要な経費をPPAと自社所有の場合で記しています。色塗りのマスが発生する費用です。例えば、PPAの場合は電気料金(PPA発電事業者に支払う)が1年目、11年目に青塗りになっているため必要であることを示しています。しかし、21年目には色塗りになっていないため不要であることを示しています。(21年目というのは、一般的なPPAの契約期間が終了した後という意図です。)

つまり、上図の自社所有の「初期費用(赤)」とPPAであれば発生しない最初の20年程度の「メンテナンス費用(オレンジ)」の合計が、「PPA事業者に支払う電気料金の合計(青)」とどちらが大きいのかというのがポイントです。

しかし、基本的にはPPA発電事業者も利益を出す必要があるため、基本的には自社所有の方が長期的にみた場合は経済的なメリットが大きいです。

  • PPA契約期間の電気料金の合計=「初期費用」+「メンテナンス費用」+「PPA事業者の利益」

結局、誰がPPAを導入するべきなのか?

ここまで、自社所有型との比較も交えながらPPAのメリットデメリットをみてきました。そのメリットデメリットを端的にまとめると、以下のようになると思います。

そのため、初期費用をとにかく抑えたい場合はPPAの導入がおすすめです。

まとめ

PPAのメリットとデメリットをもう一度簡単にまとめてみます。

メリットは、以下の通りです。

  • 初期費用がかからない
  • 電気代が安くなる可能性がある
  • 非常用電源としても利用できるためBCP対策としても使える
  • 契約期間終了後は設備を譲渡してもらえることが多い

デメリットは以下の通りです。

  • 契約期間が長期になる
  • 自社所有より経済的なメリットは少ない
  • 契約期間満了後のメンテナンスは自己負担
  • 他の機器を設置できない場合が多い

上記のメリットデメリットを踏まえて、太陽光発電を導入したいけど初期費用を抑えたい方には、PPAを導入することをお勧めいたします。取り組みのハードルがぐっと抑えられるためです。

参考

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