太陽光発電を導入するか検討する際に、廃棄費用まで含めて収支のシミュレーションをしていますでしょうか?案外ここは見落としている方も多いかと思います。
しかし、太陽光発電は廃棄する際にもある程度のまとまったお金が必要です。
そこで、この記事では太陽光発電の廃棄費用についてその相場、費用の内訳、廃棄費用を含めたシミュレーションを紹介します。この記事を読んで、導入から廃棄までの全過程をしっかりと含めて、本当に収益性があるのか確認できるようになりましょう。
太陽光発電の廃棄費用の目安は「0.59 〜 1.37万円 / kW」
2021年の経済産業省・資源エネルギー庁から出された資料によると、太陽光発電の廃棄に必要な費用は、「0.59 〜 1.37万円 / kW」とされています。
これは、2019年6月〜 9月にかけて太陽光発電協会に所属する太陽光電池モジュールの適正処理が可能な産業廃棄物の処理業者等、40社に対して行われたものです。
廃棄にかかる費用の内訳
費用は、廃棄にかかる工程によって分類できます。その工程は以下の通りです。
次の章では経済産業省の資料に則って、野立ての太陽光発電設備の廃棄にかかる費用の内訳を説明します。
仮設設備設置費用は野立てであれば発生しない
仮説の設備を設けるための費用は、野立ての場合は発生しません。実際、経済産業省の資料によると、ほとんどの企業で0万円と回答しています。
項目 | 前提条件 | 廃棄費用(最小値) | 廃棄費用(中央値) | 廃棄費用(最大値) |
---|---|---|---|---|
仮設工事費 | 傾斜なし | 0 | 0 | 1.87 |
ただし、設置場所が屋根の上などの場合は足場を組む費用が発生する
作業場所が屋根などの地上でない場合は、足場を組む費用が発生する可能性があります。
そして、その費用は対象となる建物の面積や高さによって値段が変動します。参考までに、20坪の2階建ての住宅に足場を組む場合は12万円程度するそうです。
解体・撤去工事にかかる費用は、「0.76 万円 / kW」
解体・撤去工事にかかる費用の中央値は「0.76 万円 / kW」です。
解体・撤去工事は大きく2つの段階に分かれていて、それが「①太陽光発電パネルと架台」と太陽光発電設備の下地である「②基礎」です。
経済産業省の調査では、調査対象の各社の回答は以下のようになっています。(それぞれの費用を分解して示しています)
項目 | 廃棄費用(最小値) | 廃棄費用(中央値) | 廃棄費用(最大値) |
---|---|---|---|
太陽光パネル・架台 | 0.23 | 0.31 | 7.14 |
基礎 | 0.16 | 0.45 | 1.19 |
合計 | 0.39 | 0.76 | 8.33 |
整地工事の費用は「0.21 万円 / kW」
整地工事にかかる費用は「0.21 万円 / kW」です。
借地の場合は、特に原状回復義務が発生するのでそのための費用だと思っていただけるとわかりやすいと思います。
項目 | 廃棄費用(最小値) | 廃棄費用(中央値) | 廃棄費用(最大値) |
---|---|---|---|
整地工事 | 0.01 | 0.21 | 0.52 |
廃棄処理の費用は「0.41万円 / kW」
廃棄処理にかかる費用は「0.21万円 / kW」です。
廃棄処理は大きく3つの段階に分かれています。それが「①運搬収集」、「②中間処理」と「③最終処理」です。
項目 | 廃棄費用(最小値) | 廃棄費用(中央値) | 廃棄費用(最大値) |
---|---|---|---|
収集運搬 | 0.1 | 0.25 | 0.81 |
中間処理 | 0.1 | 0.34 | 16.25 |
最終処理 | 0.02 | 0.07 | 0.49 |
合計 | 0.12 | 0.41 | 16.74 |
2022年7月から廃棄費用の積立は義務化されている
太陽光発電の廃棄費用は、FIT・FIPを利用している10kW以上の設備の場合には、毎年積み立てることが義務付けられています。2022年7月からこの運用が開始されています。
積立が始まるのは、FITやFIPが終了する10年前から開始されます。
積み立ては、源泉徴収的に一定額が毎月徴収される
積立費用の徴収タイミングは、FITやFIPの調達価格や交付金が交付されるのと同一のタイミングです。つまり、現状だと毎月積立が行われることになります。
より具体的には、積立金はFITによる買取費用、またはFIPによるプレミアム額から相殺されることになります。
(引用:資源エネルギー庁「太陽光発電設備の廃棄等費⽤積⽴制度について」)
(引用:資源エネルギー庁「太陽光発電設備の廃棄等費⽤積⽴制度について」)
積立額は「解体等積立基準額」x「発電量」
年間の積立額は、以下の計算式で求めることができます。
解体等積立基準額は認定年度と設備容量によって異なる
解体等積立基準額は、設備容量とFITやFIPの認定年度によって異なります。それを表にしたのが以下の画像です。
(引用:資源エネルギー庁「太陽光発電設備の廃棄等費⽤積⽴制度について」)
つまり、2021年度に認定を受けた20kWの設備は「1.33円 / kWh」が解体等積立基準額になります。
2021年度に認定を受けた20kWの設備の場合、年間の積立額は 2.66万円
20kWの設備の場合は、年間に発電できるのが20,000kWhとされています。
そのため、年間の積立額は、以下の計算式になります。
2021年度に認定を受けた20kW設備の場合、廃棄費用を考慮しても15年で投資回収が可能
シミュレーションのグラフは以下の通りです。
太陽光発電の収入面は、電気代の削減による効果を想定します。以下に示す通り、年間の電気代削減額は36.8万円です。
項目 | 値 | 説明 |
---|---|---|
設置容量(kW) | 20 | 導入する設備容量です |
設備1kWあたりの発電量(kWh) | 1,000 | 設備容量1kWあたりの平均的な発電量です。(太陽光発電協会のデータを参考にしています〕 |
年間発電量(kWh) | 20,000 | 「設備容量 x 設備1kWあたりの発電量」で計算しています。 |
平均電気料金(円 / kWh) | 18.4 | 2022年の高圧電力の平均市場価格です。 |
発電電力の電気代換算(円) | 368,000 | 「年間発電量 x 平均電気料金」で計算しています。 |
また、グラフ中は11年目から緑の棒グラフが若干小さくなっています。これは、前述の通り2.66万円分の廃棄費用の積立が始まることを考慮しています。
導入費用は510万円で、条件は以下の通りです。
項目 | 値 | 説明 |
---|---|---|
設置容量(kW) | 20 | 導入する設備容量です |
設備1kWあたりの発電量(kWh) | 1,000 | 設備容量1kWあたりの平均的な発電量です。(太陽光発電協会のデータを参考にしています〕 |
年間発電量(kWh) | 20,000 | 「設備容量 x 設備1kWあたりの発電量」で計算しています。 |
平均電気料金(円 / kWh) | 18.4 | 2022年の高圧電力の平均市場価格です。 |
発電電力の電気代換算(円) | 368,000 | 「年間発電量 x 平均電気料金」で計算しています。 |
まとめ
太陽光発電の廃棄費用について解説しました。
廃棄費用自体はまとまった金額が必要です。しかし、FITやFIPを利用する場合には自動的に積立されるため、特に資金の心配をする必要はなさそうです。
さらに、廃棄費用の積立を考慮しても15年程度で投資回収ができそうということもわかりました。
今回の記事が廃棄費用を考慮した上でのシミュレーションや太陽光発電の導入検討の一助になれば幸いです。
参考
- 経済産業省・資源エネルギー庁. 「太陽光発電設備の廃棄等費⽤積⽴制度について」. https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fip_2020/fip_document03.pdf. (参照日:2023年3月2日)
- 経済産業省・資源エネルギー庁. 「太陽光発電設備の廃棄等費用の積立てを担保する制度に関する詳細検討①」. https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/shin_energy/taiyoko_haikihiyo_wg/pdf/004_01_00.pdf. (参照日:2023年3月2日)
- 経済産業省・資源エネルギー庁. 「太陽光発電について」. https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/073_01_00.pdf . (参照日:2023年2月23日)
- 経済産業省・資源エネルギー庁. 「長期エネルギー需給見通し小委員会に対する発電コスト等の検証に関する報告(案)参考資料 」. https://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/cost_wg/007/pdf/007_06.pdf . (参照日:2023年2月23日)
- 一般社団法人エネルギー情報センター. 「電気料金単価の推移」. https://pps-net.org/unit#.(参照日:2023年1月11日)